●196号(2024/2/28)放送 : パワハラ横行!バス業界の闇


●195号(2024/2/14)放送 : 「群馬の森」朝鮮人追悼碑ー「撤去・破壊」でも消せない歴史

 

●詳細報告(笠原眞弓)

「追悼碑 撤去しても、消せない歴史」

 心に止めながらもなかなか行動できなかったが、昨年暮れやっと新宿アルタ前の集会に行った。私自身がこの問題をきちんと認識したのは、「あいちトリエンナーレ2019」後の「表現の不自由展 東京2022」として東京都国立市で再展示された時だった。撤去の渦中にあったこの碑も白布で巻かれた姿でその中におかれていて、胸が痛んだ。

 今回、強制撤去後粉々に砕かれた作品の写真を見た時、この小石の数だけ追悼碑を建てたいと強く思った。何回撤去されても建てつづける、他者が撤去できないところにも建てたいと。撤去反対運動をしている方たちの作った「かるた」が貼られたスタジオで、共に歴史に向き合うことを強く求められていると感じた。

〈「群馬の森」朝鮮人追悼碑―「撤去・破壊」でも消せない歴史〉

 放送日:2024年2月14日(水)午後7時半~

 配信サイト:https://www.youtube.com/watch?v=N50Kkt-riVE

 企画:松本浩美さん、尾澤邦子さん

 司会:尾澤邦子さん(群馬県吾妻郡出身)

 ゲスト:石田正人さん(「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を守る会)

     松本浩美さん(群馬の森朝鮮人追悼碑撤去に反対する市民の会)

 「記憶 反省 そして友好」の朝鮮人追悼碑は、当時の県議会全員の賛同の下、「政治的に利用しない」を条件に2004年4月に群馬県高崎市の県立「群馬の森」公園の奥に建てられた。ところがそれを撤去せよという圧力が2012年頃から強くなり議会でも撤去の勢力が強くなって、許可更新年の2014年に撤去が通告された。その後、最高裁を経て撤去が確定した。そんな中での2024年1月29日~2月上旬にかけての強制撤去である。

◆朝鮮人労務者の動員当時の映像を観る

 映像は、太平洋戦争当事、日本人労務者の不足もあり、全国各地で植民地支配下の朝鮮半島から日本の軍需工場、鉱山、発電所や鉄道敷設などに、過酷な条件で投入されて多くの方たちが亡くなった。その中に群馬県でのダムの建造などがあったという。

 「撤去」の判決が出たのは「政治的な活動はしない」という約束に反する発言が度々行われていたからというものだったという。

◆撤去までの流れを解説する松本浩美さん

・昨年の10月25日以降の県の代執行までの日程を逐一通知しつつ、本年1月29日から2月1日までに県が行政代執行をし、費用3千万円を請求するという。

・2024年1月5日 戒告処分の取り消しを前橋地裁に申し立て(守る会)

・その後1月19日付で行政代執行令書が届く

・前橋の集会には250人の参加があったが、裁判所は、「戒告処分取消が却下される重大な損害がない」という理由だった

・1月25日に知事が記者会見をして、県側の正当性を述べる

・1月28日午前「守る会」が碑の前で集会。午後「市民の会」がお別れ会(300人参加)(「守る会」「市民の会」の追悼式の写真紹介)右翼対策に、機動隊が100人ほど来た。閉園後も右翼が帰るまで「市民の会」も粘る

・1月29日昨日の花や、各自の思いを認めた付箋の張られた碑の前で、代執行を行う側が「これから代執行を行います」と宣言。これを観た時、デストピアだと思ったと松本さん

・1月31日、粉々になった追悼碑を朝日新聞が空撮 

◆追悼碑が政治的論争の種なら、日の丸も掲揚できないことになると石田正人さん

 1月25日に山本知事と県の整備部長が出席した記者会見によると、「守る会」が設置許可条件違反、つまり「強制連行=政治的」な言葉を発したので撤去すると。その根拠は「紛争が起きる」というもの。つまり、強制連行は「あった」「なかった」と言う人の間で「政治的論争」が起きるから相応しくないと。

 これは追悼碑を撤去したいためだけの理屈だと石田正人さんは言い、藤井正希(憲法学)さんの著書『検証・群馬の森 朝鮮人追悼碑裁判』の中で、日の丸掲揚について同じ理屈を言ったら、撤去するか?と指摘していたと。更に続けて、この碑はいわばお墓だと。石田さんの母上は、追悼碑の活動をしていたが、今は市の公営墓地に入っている。その前で「強制連行が問題になった」と市の職員の前で言ったら、職員はその墓を壊さなければならないと指摘する。

◆裁判の経緯(松本さん)

・一審判決 「強制連行」「強制労働」に類する発言を複数回したから、政治的集会だと認定される。だが、それに対して県は一度も注意や指導をしていない。従って勝手に撤去を決めたのは裁量権の逸脱である

・二審では、日朝、日韓の友好のために作られたのだが、強制連行などの発言によって政治的行事が行われたから、その価値が無くなった。よって公園に置けなくなった

 県は、この2022年の判決をもって、法治国家としてのプロセスを踏んでいるから県側は正しいとしていると松本さん。ところがこの判決は、2014年時点に於いて「設置基準を守っているか」の判決であって「撤去していい」という判決ではないと強調。

◆追悼碑建立の経緯は…石田正人さん

 日本の国がしたことを隠ぺいするこの経緯について、韓国でも大きな関心が寄せられているとか。今年の1月28日の追悼碑前集会の映像の後、石田さんによる建立の経緯が語られる。

 1945年に日本は戦争に負け、50年後の1995年、日本国内で「戦後50年」の意義について大きく取り上げられた。その当時、全国各地であった強制連行・労働の掘り起こしが行われた。かかわった個人がまだ存命だったり、企業の社史(今でも存続する大手建設会社など)、県の公文書、村史にも記載されたことも大きかった。

 水の豊富な群馬県には、今でも東電に電気を送っている岩本発電所などがある。若者達は兵隊に取られ、軍需関係の人手不足を補うための朝鮮からの労働者の投入だった。今でも当時建設された水を通すだけの「導水橋」遺構がある。

 記録には「米麦のない中、彼らにはドングリの粉の団子を1日2個のみが与えられていた」という劣悪な労働条件が近くの村史に残る。他に地下飛行場建設のための過酷労働の記録、役場の火葬記録などを上田さんは次々示す。

 この調査結果を県民に知らせたいと10年位かけて2014年に建てたのが、追悼碑である。  建てた時は、知事も県議会も許可したのに、10年目の更新2年前、安倍晋三が日本会議を作り、美しき日本と言いながら負の歴史を徹底的に隠そうとした2012年に議会は不許可にする。

 司会の尾澤さんは群馬県出身。高校生の頃、吾妻線で通学していたと。その鉄道が、朝鮮人の強制労働で建設されたことを今回、資料ではじめて知った。そういうことは、とても大切なことで、伝えていくということが大切だと思うと同時に、「公」がやったことなので、「公」がきちんと追悼し、守っていかなければならないのに、壊してしまった。群馬県が、ぜひ再建してほしいと力を籠める。

 松本さんは、県は「そよ風」を利用して歴史の視点に踏み切った。これは差別扇動である。彼らの子孫が日本にいる。その彼らを否定することに他ならないと力を籠める。

 しかも撤去が決まってからの集会へのヘイトスピーチはエスカレートし、これまで減っていた相手を侮辱することも叫ばれるようになった。これは県の強制撤去処置が、お墨付きを与えたとしか考えられないと。

 この判決は「静かな公園にするためには、迷惑なものは撤去してもいい」ということ。この判決は、他のところでも使ってくる可能性が大いにあると危惧している。

 石田さんは、ヘイトはある程度抑えられていたのに、今回のことでまたひどくなってきた。このことは、個人ではなく、群馬県という公的機関が、税金を使って差別を煽ったことになった。

◆視聴者・会場から

 Aさん:群馬県知事の山本一太さんは、参議院議員時代安倍晋三の腰巾着だった。

 Mさん:強制連行がタブーになってしまったということになる。最近では「汚染水」という言葉を使うなと政府側が言い、マスコミが全員これを受け入れた。言葉狩りは怖いことだと思う。だから我々は「強制連行」を使い続けたい。もう一つは、勝手に撤去しておいて、3000万円出せとは、どういうことなのか?スラップ訴訟ではないか?

 上田さんは答えて「強制連行」という言葉を使ったからと言い始めた。それは「そよ風」に撤去せよと言われてからこの言葉を使ったから政治的だと言いはじめた。追悼式の時などで以前からこの言葉は盛んに使われていたのに、おとがめがなかった。行政は「汚染水」だって同様に、その時の権力の使い勝手の良さで使っているという。

 強制代執行についても、これは「移動させる権利」なので、そのままの形を残しての移動なのに粉々にしてしまった。請求額の明細を示すように要求しているが、返事はもらっていないということだ。

 Bさん:強制連者は終戦後どうなったか

 上田さんは、国として何もしていない。来日の仕方がそれぞれ異なっているので、帰り方もそれぞれだったはず。しかも、国としては、一切の記録を破棄するように通達している。ところが中国人の場合は中国が戦勝国だったから、ちゃんと現地の行政が調べて名簿を提出している。

 この問題は、私たちの課題として、これからも追及されるべきものということだ。

*休憩タイム「ジョニーと乱の5ミニッツ」

川柳コーナー

 記憶反省友好知ったことかと碑を撤去  乱鬼龍

 追悼碑良心砕き歴史拒否  白眞弓

ジョニーHの替え歌コーナー 

 山本一群馬県県知事へ捧げる『歴史修正』元歌は『軌道修正』(山口百恵) 


●194号(2023/12/13)放送 : 映画と本で振りかえる2023年

レイバーネットTV速報:「もっといい人生、もっといい社会」映像の挑戦

 12月13日、レイバーネットTV(194号)今年最後の放送は「映画と本でふりかえる2023年」を放送しました。本は志真秀弘さん、映画は永田浩三さん(武蔵大学教授)と笠原真弓さんに出演していただき、どちらのコーナーも愛情あふれる話を聞くことができました。

 関東大震災100年という今年、映画『福田村事件』が大ヒットしましたが、そこに至るまでには歴史の掘り起こしに尽力した書物の力があったと志真さんは言います。今年のイチオシとして挙げたのは『それは丘の上から始まった』『福田村事件ー関東大震災・知られざる悲劇』『関東大震災 朝鮮人虐殺の真相』の三冊で、いずれも著者は研究者やジャーナリストではなく市民でした。朝鮮人虐殺を認めない、あるいは、ナチスの手口を評価するといった歴史修正主義が跋扈していますが、市民の側がきちんと検証していく動きがあり、変化の兆しが見えた一年だったと振り返りました。

 続いて映画コーナー。いつも以上に話題作、問題作が多かった中で、永田さん、笠原さんの両者が力を込めて推薦したのが、塚本信也監督の『ほかげ』でした。戦争がいかに人の心を破壊するか、戦争とはいったい何なのかが、深く刻み込まれる作品だと絶賛。『福田村事件』や津久井やまゆり事件をモチーフにした『月』など、論議を巻き起こした映画にも言及し、永田さんは「たしかに問題はあるし、もっとこうしたらよかったということは言える。でも映画人たちがタブーに切り込んだのはすばらしい。第二作、第三作でもっと深いものができるだろう」と語りました。映像制作を学生に教えている永田さんならではの言葉ですが、同時に私たちも映画を観るとき「こうしたらもっと良くなるのでは」という視点を持てたらいいなと思いました。

 11月に亡くなった脚本家・山田太一さんも、「挑戦し価値観を揺さぶった人」だったと永田さんは言います。「日常に安住するだけじゃダメだよ。もっと人生は素晴らしいし、社会はもっといいものにならなきゃいけない」という山田太一のメッセージは、映画、ドラマという枠を超えて引き継がれなければいけないし、頑張っている作り手は沢山いる。その言葉に元気をもらえた気がします。

 他にも、津波によるPTSDを描いた『さよならホヤまん』や『翔んで埼玉2』『ゴジラ-1.0』などバラエティーに富んだ映画案内が満載。ぜひアーカイブをご覧ください。今年もあとわずかですが、きっと映画館に足を運びたくなりますよ!(堀切さとみ)

〈詳細報告〉 笠原眞弓

思いを受け継いで語り合いたくなる本や映画たち             

 この世から、本や映画、テレビドラマがなくなったら、なんと無味乾燥な世の中になるでしょうか。私たちは、無意識にそれらの作品を通して、知らない人ともコミュニケーションをとっていると、つくづく思った時間だった。(報告:笠原眞弓)アーカイブ録画:https://www.youtube.com/watch?v=1rhJdwVdJrY

構成・司会:堀切さとみ

【第一部】本のコーナー

ゲスト:志真秀弘さん(レイバーブッククラブ)

 

あなたは本をどこで買いますか? 最近の本屋事情

ネットなどで簡単に本が買える時代になって、本屋さんが閉店していっている。その中で志真秀弘さんは、書評家の永江朗が「新しい動きとして、カフェ&ブックのような本が読める空間の提供や、本を挟んだイベント会場などと様々な試みが全国的に広がり注目されている」と述べていると紹介し、志真さんも同感で、その場が読者を育てていく役割もするという。

 

公募一押しの本アンケートの結果報告発表

今年は、10名の方からの「今年のお薦めの1冊」の応募があり、その報告があった。

(本と映画のアンケート結果は下記掲載↓)

http://www.labornetjp.org/news/2023/1216anke

 

志真秀弘さんのお薦めの3

志真さんのお勧めは、100年前の東京大震災時の朝鮮人虐殺関連の3冊である。

・『それは丘の上から始まった―1923年横浜の朝鮮人・中国人虐殺』後藤 周 ()/ 加藤 直樹 (編集)

・『福田村事件関東大震災・知られざる悲劇』辻野弥生著

・『関東大震災 朝鮮人虐殺の真相』関原正裕著

『福田村事件』の著者、辻野弥生さんは「図書館の友の会」で活動していて虐殺事件を知り、追及していったいわば市民活動の中から生まれた本で、そこが優れたところという。

『それは丘の上から始まった』の丘の上とは、これまで被災に関してほとんど明らかにされてこなかった横浜の被災状況と朝鮮人虐殺を丁寧に、実証的に描いている。

『関東大震災 朝鮮人虐殺の真相』は、埼玉の出来事。東京の被災はこれまでも多角的にとらえられているが、この3冊で、千葉、神奈川、埼玉の3県の震災の様子が見えてくる。

 

著者はそれぞれ専門のジャーナリストや研究者ではなく、『それは……』の後藤さんは中学校の先生、『関東大震災』は高校の先生で、『福田村事件』と合わせ3冊ともそれぞれの活動の中で生まれたことが共通した特徴という。

松野官房長官や小池都知事らの様子でも分かるように、当面は政府の側で歴史的事実を掘り下げていくことがあり得ない中で、市民の自主的な活動からこのような作品が生まれたことは、注目すべきことだという。

 

変化の兆しが見えてきた1年 『ナチスは「良いこと」もしたのか』他

以前「ナチスの手口を学んだらどうか」と麻生太郎が言ったが、なんとなく一つの出来事 として過ぎて行った。ところがそれを厳しく批判する人がいる。『ナチスは「良いこと」もしたのか』(小野寺拓哉・田野大輔著:岩波ブックレット)によると、麻生のたまたまの発言ではなくて、底流として歴史修正主義の果てに出て来た発言で、アンケートにもあった(小野政美推薦)『<悪の凡庸さ>を問い直す』(田野大輔・小野寺拓也編著)と共に優れた本だと思う。どう変化するかはともかく、(いい方向への)変化の兆しが見えてきたと言いたい。

 

例えば、次の2冊。

①『地域主義という希望』岸本聡子著

②『コモンの「自治」論』岸本聡子・斎藤幸平・松本卓也他の共著

この2冊とも今年のレイバーネットのブッククラブで取り上げた。

『地域主義という希望』は、杉並区長になった岸本聡子さんの著書。『コモンの「自治」論』は、岸本さんを含め、斎藤幸平・松本卓也等の共著の2冊。これらは、新しい提案が含まれ、考えさせられるいい本だと思う。

 

実際活動から生まれた本の中から3

 

・『自分で考え判断する教育を求めて日の丸君が代をめぐる私の現場闘争史』根津公子著

・『なぜ日本は原発を止められないのか?』青木美希著

・『私たちは黙らない』平和を求め軍拡を許さない女たちの会 関西(編集)

これらの積極的な問題提起を含んだ本が出版されたことが「変化の兆しが見えてきた」という意味でもある。

レイバーネットのHPでは、更に〔週刊 本の発見〕というページがあり、かなりの冊数が紹介されている。(http://www.labornetjp.org/Column/

堀切さんは、政府は歴史を掘り起こすということをしないので、市民が証言を集め、本や映画にしていく、画期的な1年になったと思うと。志真さんは、来年はコロナが明けて活発に動ける条件が出来てきたがそれだけではなく、地道な長い活動が実を結ぶ、あるいはそれを手掛かりに前に進み深まっていく、そんな機運が様々な分野で生まれてきていると希望を持っていると志真さんは言う。

 

【第二部】映画のコーナー

ゲスト:永田浩三(武蔵大学教授/ジャーナリスト)

    笠原眞弓(レイバーシネクラブ)

コロナの3年、意地になって映画館に通っていたが、最近はお客さんが入ってきた。議論の巻き起こる映画が多かったと、永田浩三さん。

先ず、今年は15名の方からのアンケートを読み上げる。

本と映画のアンケート結果は下記掲載↓

http://www.labornetjp.org/news/2023/1216anke

『さよならホヤまん』—―大きな被害の陰の小さな被害……でも人生がひっくり返るほどだ

 

笠原の推薦は、『さよならホヤまん』(庄司輝秋監督)。

東日本大震災の被害というと、当事者でないとつい大きな被害にばかり目が行くが、実は一人ひとりの生活がひっくり返されるような事象があり、それの被害の大きさに大小は付けられないということに気づかされた。そして登場する人がみんなやさしい。

永田さんは補足して、石巻の漁師の話であること、両親が津波で亡くなり、残された兄弟の弟は船に乗れないこと、彼は、放送中の朝ドラで、亡くなった兵士の役をした黒崎煌代さん。

面白いけれど、胸に沁みる作品という。

 

永田浩三さんの推薦映画の紹介/『福田村事件』は関東大震災の最初の劇映画

 

先ずなんといっても『福田村事件』(森達也監督)ということだ。ある上映会では、パンフレットが飛ぶように売れていて、アフタートークでは著者の辻野弥生さん、脚本の井上淳一さんで盛り上がった。香川からの行商の人たちがお腹の赤ちゃんを含めて10人が亡くなった。それ事態は、歴史的事実だが、原因が分からなかった。20年前に永田さんが地元のお寺を訪ねている。当時地元の市川正広さんたちが調べて、2003年に追悼碑を残した。その後辻野さんが調べて本になった。

永田さんは続けて、この映画についていろいろ言う人はいるが、これまで関東大震災を取り上げた劇映画があっただろうかと投げかける。俳優さんを含め、その勇気と努力に拍手を送りたい。またコロナの3年の映画館にとって、この映画のヒットで、地方の映画館が一息付けたことも評価したいと。

ただし、行商やハンセン病の描き方や特に被差別部落がネガティブな影響、例えばカッコつきの聖地巡礼が起きていて、被害を被っている様子を語る。例えば、讃岐弁を朝鮮人と間違えてということになっているが、本当にそうなのか分からないと。

資金難を覚悟して、かかわったみんなが手弁当で頑張ったとか。そうして生まれた映画だから、欠けたるものを次の映画人が引き継いで、更にこのテーマをそれぞれ描いて行ったらいいのではないかと暖かく語る。この映画に関しては、討論会をしたいという動きがあちこちであるのも特徴。

 

戦争によるPTSDを描いた『ほかげ』他

『さよならホヤまん』が津波のPTSDなら『ほかげ』(塚本晋也監督)は、兵士や市民などの受けた戦争のそれであると永田さん。流された予告編のほんのわずかな映像でも主役の売春婦を演じた趣里と、片腕の動かない森山未來(二人ともブギウギに出演)の演技。それを超える戦災孤児の少年の目の力に凄みを感じると。

兵士は学校の先生で、さんすうの教科書をお守りとして持っていて、男の子に教えていたが心が壊れていた。趣里演じる女は、最後に男の子に言う。「坊やしっかり生きてね。危険なことはしないで、ちゃんと自分で働いてご飯を食べるのよ。約束よ!」と叫ぶ。いま、ウクライナやガザで子どもや女性たちが殺されていくのを見ている我々は、戦争をするとこんなひどいことになるということを、今の問題として語っていると思う。

 

塚本晋也監督はなぜ『ほかげ』を撮ったのか

塚本監督は『野火』『斬』を加えた3部作として位置付けているが。それはどういうことか?と堀切さん。

永田さんは答えて、1部で四國五郎を書いた「本」の紹介があったが、広島で四國五郎の弟に向けた映像が作られ、木内みどりさんと塚本さんが語りをしている。その上映会で塚本さんが、ベトナム戦争の時に人を殺した傷をずっと抱えていたアラン・ネルソンさんの講演と本を読んで「戦争の傷」を映画にしたいと話した。その中で今回の映画ができていると思うと。

笠原は、あの映画の圧倒的力を語る。兵士の苦しさは、戦場だけでは終わらない。戦地での自分のしてきたことの始末ができず、23代にわたる苦しさを日本ではこれまで取り上げられてこなかったが、最近表に出てきた。それが戦争の現実だと知っていたいと。

戦場でのPTSDを抱えた復員兵の次世代が、語るようになってきた(黒井秋生さんなど)が、戦争は終わっても個人の中では終わらないこと。

日本では、上官の命令で人を殺しても上官は罪に問われないが、手を下した人は戦犯となる。

『ほかげ』では、森山未來が上官への仕返しをしに行くと永田さん。

新たな戦前と言われている今、是非若い方に見ていただきたいと口々に言う。

 

『月』の果たした挑戦を更に深めて2作目、3作目を重ねてほしい(石井裕也監督、辺見庸原作)

『月』は衝撃的な作品だった。この国の平和のためにとやまゆり園で起きた事件を真正面から取り上げている。「言葉を発することが出来ない人」=「意思疎通の出来ない」人だったのか?よくきけば、言葉以外の方法で日常的にはコミュニケーションは取れていたとやまゆり園の職員は言う。映画の中に意思疎通は出来ていたと強く言う人がいたら、どういう映画になっていたかと思うと永田さん。

堀切さんは、映画では、深い森の中に施設があり、市民と関係なく生きている。その闇の中で職員も障がい者も現実から疎外されて生きている。

永田さんは学生時代、重度障がい者の施設実習があり、思い悩んだり、殺してしまったりすることに、少し感じることもあるけれど、監督が理解しようとしたことは見えたが、更に作り続けて、深いものになってほしいと思うとしめくくる。

 

『翔んで埼玉2』の面白さ 映画は家族で、友だちと楽しむものがあっていい(武内英樹監督 二階堂ふみ/ GACKT)                                                  

大阪の首長が片岡愛之助で神戸が藤原紀香(実生活では夫婦)というのもおもろい。大阪維新の会や万博に入れあげたりタイガーズ愛などで、揶揄されている。「埼玉に海がないから作ろう」ということから紀伊の白浜に砂を撮りに行くことから始まる。

堀切さんは、劇場の場所によって受けるところが違うと笑う。永田さんも、滋賀も奈良も和歌山も兵庫も一段下に見られるということはなく、大阪の方が、こんな町どうしようもないと馬鹿にされている感があった。誇り高き滋賀県民という感じ。

 

ナチスドイツの映画の3部作『ゲッベルスと私』『ユダヤ人の私』『メンゲレと私』

3部作それぞれがナチスのやり方とその崩壊について描いている。最新作の『メンゲレと私』では、9歳から13歳までをゲットーと収容所で過ごしたダニエル・ハノッホの証言である。非人道的な人体実験を繰り返したメンゲレの寵愛を受ける。

この過酷なホロコーストに耐えた人たちが、イスラエル建国へつながっていくのだが、映画は抑制的で「イスラエルが素晴らしい」などとは描いていないと永田さん。続けて、中東から離れた我々が「どちらにも言い分はあるよ」と言えば、それは違うよということになるという。

3部作全部観た笠原は、この『メンゲレと私』は、子どもの記憶はぶれることがないから、信用できるのだが、なぜ彼は死の扉に行かなかったのか、考えた。

3作とも間に映像が挟まる。アメリカの宣撫政策用の映像など、初めて見るものもあった。

 

差別排外主義とその真逆の劇映画の『ヨーロッパ新世紀』『丘の上の本屋さん』を紹介

『ヨーロッパ新世紀』はルーマニア一地方で、ハンガリーの人たちと共存していたところにスリランカの季節労働者が入り、パンを焼く。ところがスリランカ人のパンは食べられないと排除する。その先頭に立つのが、地域のインテリと言われる神父や医師など。それが圧巻!

『丘の上の本屋さん』は、ユネスコがかかわっている映画。イタリアの田舎町の古本屋さんのおじいさんと、ブルキナファソから来た移民の男の子の物語。お金のない少年におじいさんが、1冊ずつ本を渡す。ピノキオとか、星の王子さまとか。最後に渡すのが『世界人権宣言』。この本こそ君を守ってくれる宝物の本と。戦争の今の時代に、この人権宣言がどんなに大事か訴えていると静かに永田さんは語る。

笠原は、本を渡すとき、これまでは必ず返いようにといっていたのに「返さなくていい」というところに込められた意図を感じると。

 

最後の1点はなんとゴジラ!『ゴジラ -1.0』(山崎貴監督)

永田さんはこれだけは言いたいと、『ゴジラ -1.0』を紹介。元祖ゴジラは、水爆実験によって生まれたゴジラ。-1.0とは、その前の1946年にビキニ環礁で戦艦長門を標的にした原爆実験があった。その時に生まれたのだという。

(戦艦長門は1945915日(米軍に接収・除籍)。1946729日、戦後米軍の原爆実験にて沈没)

映画では『らんまん』の神木隆之介と浜辺美波の二人が、全く違うキャラクターで出演する面白さもある。

 

シナリオ作家山田太一さんを語りたい

先ず取り上げたのが『早春スケッチブック』。永田さんの簡略な筋書きを聞きながら、人生の複雑さを思う。山田太一は様々な挑戦をしていて「ホームドラマはお茶の間にやって来る日常だが、それに安住してはいけない。人生はもっと素晴らしい」とテレビを通じてグラグラと揺さぶって来ると。

『男たちの旅路』にしても、説教を垂れていた特攻隊の生き残りが、若者たちに逆襲される。

また、社会の変化にも敏感で、1979年に放映された『車輪の一歩』は、駅の階段の下で車椅子の女性が「だれか私を上げてください」と叫ぶ。障がい者運動のステージが上がるときにも、山田太一ドラマは大きな貢献をしたと。

他にも、子どもを産むか産まないかの会話の中で「子どもは宝だ」と言っているとき、笠智衆に「子どもはつまらん」と言わせたり。

山田太一さんは、俳優にアドリブを許さず、シナリオを大事にしたとか。山田さんは、木下恵介さんに鍛えられて、松竹で助監督もした人。向田邦子さんと倉本聰さんの3人で日本のドラマを豊かにし、脚本家の地位を向上させたという。

 

会場からの質問

・今のテレビ作品でいいのはありますか?

永田「ブギウギ」は素晴らしい。あれは戦争が如何に芸能を弾圧するかも描いているし。NHKがダメになったのではなく、それぞれの現場が頑張っているし「どの時代にもいいものはある」という立場だと永田さん。応援団でありたいと思っていると。

例えば、ゴジラの映画にしても、映画表現としての技術の高さには、すごいものがあるが、問題は、ゴジラは何で東京湾に来たのか、ゴジラは何と闘うのか、という骨太の脚本が書けるかいうこと。1954年の製作者たちは、再び核兵器の犠牲になる人が出ていいのかと怒っている。国会の場でもゴジラで啖呵を切るほど映画に力があったと永田さん。

山田太一さんに話を戻せば、テレビドラマは映画より一段下だという価値観に対して、果敢に挑戦していた。例えば、現場で役者の希望でコロコロセリフを変えられる屈辱を経て、セリフを変えさせなとか、戦国武将ばかりの大河ドラマに、庶民も描けると秩父困民党の物語を投入する。視聴的には負け戦だったかもしれないが、歴史に燦然と輝いている。

 

・「私はモーリン・カーニー」についてギャラリーから

フランス政府が95%株を持っていたアレバ社の、中国との技術提供をするという密約から発した映画があった。紹介で出てこなかったので、感想を!

永田さんはアレバ社と中国との密約がテーマで、労働者を守る映画と紹介。その秘密を暴いたので、レイプを受ける。そのレイプが自作自演ではないかと一蹴されるが、負けずに闘う。今でもフランスと中国の原子力産業は深い関係にあり、今日的問題だ。そこをもっと描いてくれたらなぁと思う。結局今度の福島の事故を受けてアレバは方針転換をするが、そこは描けていないと。

 

最後に一言ということで

・笠原は『グレート・グリーン・ウオール』を勧めたい。

これは温暖化防止に取り組むアフリカのサヘル地方の取り組みで、マリ出身のパリで成功した歌手インナ・モジャが、そこで暮らす人の言葉を紡いでの音楽もいいし、紛争中の国もありながら、複数の国がかかわり、自力でやり遂げようと努力しているところに感動する。永田さんも言葉を添えて、セネガルからエチオピアまでの緑化運動を取り上げたもの。グリーンウオールを、20年、30年かけて作っていき、地元で生きていけるようにしようという映画と。

・永田さんは、今年の山形映画祭が久しぶりにリアルであり、それがまた、来年再来年に上映されていくことを楽しみにしている。

今後のレイバーネットTVは、1月はお休みで2月から再開予定。


●193号(2023/11/20)放送 : パレスチナ・ウクライナ即時停戦を!ー伊勢崎賢治さんと共に考える

★レイバーネットTV(11/20)速報 : 「アルジャジーラを見たほうがいい」伊勢崎賢治さん

 11月20日のレイバーネットTV193号は、「パレスチナ・ウクライナに即時停戦を!」をテーマに伊勢崎賢治さんにたっぷりお話を伺いました。聞き手はジャーナリストの土田修さん。伊勢崎さんは、マシンガントークでほとんど止まらず、情報量も多くて付いていくのが大変でしたが、大変刺激的、具体的で示唆に富んでいました。さすがに国連職員として世界の紛争地を駆け回り、「とにかく一人でも殺してはだめだ」の精神で和平のために体を張ってきた人です。その生々しい体験談から見えてきたことは説得力がありました。パレスチナのことでは「まず合法的に政権をつくったハマスを認めて対話することからしか始まらない」と明確でした。「アメリカ・イスラエルが主導する西側メディアではなんにもわからない」と強調。ではどうしたらいいかの質問には「アルジャジーラを見たほうがいい。YouTubeで見られる」(https://www.aljazeera.com/)とアドバイスをいただきました。オンラインの羽場久美子さんは、「グローバルサウス」の視点からみた世界情勢をわかりやすく語りました。ぜひアーカイブをご活用ください。(M)

★詳細報告「ハマスと対話せよ」ここが停戦の第一歩

 報告=笠原眞弓

この放送は、11月20日の夜。ところが報告を書くために整理している22日、ネットに「4日間の停戦」の言葉がアップされてきたのです。驚くやら喜ぶやら! それがどのような結果をもたらすのかはやってみなければ分かりません。でもまるで真っ暗闇の中に新生児の呼吸音が止まる様子や子どもたちの泣き叫ぶ声が聞こえない日が訪れる喜びは、何事にも代えられません。お話の中から「停戦」に焦点を合わせてまとめてみます。(報告=笠原眞弓)

*放送:11/20 11/22にハマスから停戦提案があり、実行された。26日の時点で戦闘休止期間の延長を双方提案している

アーカイブ(90分) https://youtu.be/YOfjAWemPhc

司 会:土田修(ジャーナリスト)

ゲスト:伊勢崎賢治さん(東京外語大学名誉教授)

   :羽場久美子さん(青山学院大学名誉教)オンライン参加

◆アルジャジーラの現地潜入放送を見ていると胸がつぶれる

司会の土田修さんはパレスチナの新たな紛争が始まってから、毎日、中東カタールの衛星 テレビ「アルジャジーラ」の配信するガザでの紛争(大量虐殺)の現場中継を見ているが、胸がつぶれるという。自分たちの生存権・自由権を盾に、多くの一般市民を巻き添えにするイスラエルの攻撃がなぜ許されるのかと怒りを述べ、世界各地で市民レベルでの停戦運動が盛んになっているのに、なぜ国際社会はそれを止められないのかと憤る。

ウクライナの即時停戦を求めて「Ceasefire Now!今こそ停戦を!」の声明を発表した 伊勢崎賢治さんと羽場久美子さん(オンライン)に「戦争の止め方」のお話をうかがった。

 

1 伊勢崎賢治さん

◆紛争の止め方 「人権」に空白を作らなければならない時がある

伊勢崎賢治さんは「紛争の請負人」と自ら名乗り、「紛争屋」と言います。この名前は自 虐的に付けたという。ジャーナリストと同じ、人の不幸で飯を食うという悲しい職業で、 敵も作るという。自分にとって「人権」は宗教なのに、この仕事は一定期間「人権」の空 白期間を作らなければならない時がある。人権侵害者の最たるものである戦争犯罪者に「 銃を置いてくれ」と頼むわけで、闘っている真最中には聞いてもらえない。少し疲れてき たときに一定期間空白にすることを提案する。それを専門用語で「移行期正義」という。

◆法の正義は裁きたい人間を裁くことではない—人権と平和は両立しない

なんと、戦犯が起訴されて裁かれるまでに長い期間が必要で、10年以上かかることもある という。それは、法はすべての人に平等であるから戦犯にも正義があり、判決までに長期 間かかるということだ。

しかも、停戦活動は、国連本部(ニューヨーク)のミッションで停戦交渉に従事し、悔し い思いをしながら戦争犯罪者の罪を不問にするが、同じ国連の人権委員会(ジュネーブ) から不処罰の文化を作っていると常に糾弾を受ける。国際紛争の和解交渉の場では「人権 と平和は両立しない」と停戦交渉の難しさを強調した。

◆停戦は妥協である   国連は中立の立場で仲介に入るが、どちらかの相手が闘い続けたい場合は停戦を潰すため に後ろから刺されることもあるので、停戦交渉の準備は秘密裡に行われる。

東チモールの時は、伊勢崎さんがこだわったのはやはり「人権」。それが言われるように なったのは第2次世界大戦直後で、世界人権宣言でうたわれた。その「人権」には、自分 たちの国だけでなく、敵国の人権も含まれるという。

ここでアフガニスタンでの経験が語られ、20年間という米軍にとって最長の戦争に敗北し 撤退した米国の軍部は、多くの教訓の中から陸戦ドクトリンを作った。そこでは国の正規 軍とは違ったインサージェント(非対称戦力)との戦いの困難さが説かれている。米軍幹 部は政治家と違ってハマスのことも「テロリスト」とは言わず、「インサージェント」と 呼んでいる。タリバンも最初は「テロリスト」と称していたが、アメリカは2006年からタリバンとの和平交渉を始めていた。かつてはテロリストであっても、今ではタリバン政権を認めるしかない。

◆日本の法律には「上官責任」がない

日本はジェノサイド条約を批准していない。北朝鮮でも批准しているのに。人間が、民族 の違いやアイデンティティのために殺されることは、あってはならないこと(日本でもジ ェノサイドは起きている。関東大震災の朝鮮人虐殺が、裁かれていないと土田さんから一 言入る)。つまり戦争犯罪は、軍人ばかりでなく、民衆も起こす(九条があっても止めら れない)。それがジェノサイド。直接手を下した人たちよりも、法的に問われるのはそれ を命じたり、煽ったりした上官責任。命令による戦闘行為で2000人を殺したら、上官の責任となる。国際法で日本も批准したが、日本は行政も含む上官責任が法で定めていないので、上官に責任を問えない(自衛隊にもないので、何を命令しても裁かれない)。大問題です。批准するには、署名するだけではダメで国内法を変えなければならないが…。野党も分かっていないという。

◆イスラエルとガザの戦いの行方は

このイスラエルとガザの戦いはハマスによる自爆的で絶望的な戦闘なのに、始まったとた んに米軍関係者でさえ「ハマスは勝利した」といったという。

1993年にパレスチナとイスラエルの「二国家共存」による解決をめざす「オスロ合意」が、イスラエルのラビン首相、PLOのアラファト議長、クリントン大統領によって締結された。それから5、6年後にエルサレムの多重統治の可能性について、ヨルダンの皇太子やペレス元首相と一緒に共同調査した。今では想像もできないことだが、イスラエルにもパレスチナに同情的な政治家がたくさんいた。だが、調査結果が出る前にリクード党首シャロンが治安部隊1000人以上を引き連れてイスラムの聖地アル・アクサ・モスクへ強行入場し、オスロ合意は吹っ飛び、第二次インティファーダ(民衆放棄)が始まった。共同調査も終わりになり、伊勢崎さんにとって辛い結果となった。その後も銃剣とブルドーザーによるヨルダン川西岸への入植は続いており、既に70万人以上がパレスチナ人の家を破壊し、土地を奪って住み着いている。

現在、ガザでは毎日100人~200人が殺されている。ホロコースト以上の殺戮が起きている。

ナチスでもここまではやらなかった。でも民衆を殺せば殺すほど、国際社会はイスラエ ルを非難するようになる。これが武力では圧倒的に劣るインサージェント(非対称戦力) の戦い方だ。ハマスはムスリム同胞団の系列でもともと、医療や社会福祉などの地域活動 をこまめにやっており、2006年のパレスチナ自治区の民主選挙で圧勝している。ガザを〝暴力的に実効支配〟しているのは西側のプロパガンダだ。自治政府に追い出され、仕方なくガザだけを統治している政治団体だ(政府はカタールにある)。今回のイスラエル攻撃は勝ち目のない絶望的で自爆的な行為だったが、国際社会の目をパレスチナに引きつけたことでハマスは既に目的を達しているといえる。伊勢崎さんの知人の米軍幹部も「ハマスは勝利した」と言っている。

 

2、羽場久美子さんの指摘(オンラインで参加)

◆未来に対する爆撃を繰り返すイスラエルそれを支える国は?

20世紀に貧しかったアジア、アフリカ、中南米など「グローバルサウス」といわれる140 以上の国々が、パレスチナに対する停戦を要求しているのに、反ユダヤ主義のそしりを免 れるために、アメリカ、ウクライナ、イスラエルなどが国連総会で、停戦を求める議決案 に反対し、日本、欧州が棄権しているという状況だ。

◆アメリカのユダヤ人社会でもイスラエル国内でも否定されるネタニヤフ

ところが、アメリカ社会でも戦争を止めようとする要求は民間人にも広まり、一部大学で のデモがあり、ユダヤ人社会からも認められないという声明が出された。国際社会が数日 の戦闘休止を提案しているのにも関わらず、イスラエルのネタ二ヤフは拒否。病院の中で も銃撃を継続している(23日から27日までの約束での1時停戦実施。今後に注目)。

イスラエル国内でも汚職と司法制度「改悪」でレームダック状態(死に体)になっていた ネタニヤフの退陣を求める抗議運動が起きていた。イスラエルでは極めて珍しいことだ。 ハマスの攻撃のおかげで「挙国一致内閣」をつくり、ネタニヤフは一時的に延命したが、 今後、国内外からの批判が強まるのは間違いない。このままだとアラブの海に浮かぶイス ラエルという小島は生き残れなくなるのではないかと語る。

◆ハマスは正当な政権—イスラエル自身の首を絞める彼らの爆撃

パレスチナのハマスは民主的な選挙で出来た政権であるのに、その国で他国軍が次々に人 を殺していく行為は、即刻止めなければならない。今落としている数千発の爆弾が、イス ラエル自身の首を絞めているということだと強調。

◆戦争をつくりだしているのは誰かを見極めること

日本政府は国連でもアメリカに追随しているが、今後、経済力でも中国、インドがアメリ カを抜くのは間違いない。いつまでもアメリカに追随していていいのかと土田さんの質問 に、羽場さんは「そうです」と答え、イスラエルもウクライナの戦争も、台湾有事も基本 的にアメリカが煽って戦争をつくりだしていることが、明らかになった。国連総会では、 日本を含め、欧州なども停戦賛成に回った。日本政府は中東ともいい関係があり、今後の 石油に絡んだ国益を考えるうえでも、アメリカ側に立ち反対し続けることは、国際的地位 を考えても得策ではないと締めくくった。

 

3、再び伊勢崎さんに聞く

◆「停戦」とは相手を交渉相手として認めること

紛争国同士が友好条約を結ぶのに数年はかかるので、国際社会が注視する中で「撃ち方止 め」にして、犠牲者を出さないことが大事。

民主的な選挙で選ばれたハマスを「テロリスト」と言っている限りは、正式な停戦交渉は できない。日本の左翼も共産党もそれが分かっていない。分かっているのは野党ではれい わ新選組の山本太郎だけ。パレスチナ連帯のデモはいいが、そのことを平和運動の中で 声を大にして言ってほしい。

◆戦闘終結の世論づくりはメディアの仕事 当面アルジャジーラの配信に注目を

伊勢崎さんは続けて、停戦にもいろいろあり、北朝鮮のように「半停戦」状態が続いてい て、大規模な戦闘は行われていないのもある。この、大規模戦闘が行われないことが大事。重要なのはそれを他国がサポートすること。つまり、国際世論を作っていくこと。 この世論作りは、なんといってもメディアの仕事である。

続けて中東の衛星テレビ局、アルジャジーラの紹介があったが、このテレビ局は、パレス チナ関連では中立的な立場を守っており、唯一ガザに記者を派遣して現地から生放送を発 信している。ウクライナに関する報道も信頼できるという。

アルジャジーラのアドレス→ https://www.youtube.com/user/AlJazeeraEnglish 

4、会場とのやり取り(伊勢崎さんの答)

・国連の仕事をしていて、実際にいのちの危険を感じたことは?

伊勢崎:アフリカの人口400万のシエラレオネ共和国で内戦があり、調停に入ったが停戦 合意だけで3回破られ、その都度戦闘が起きて、部下が亡くなったことがある。武装勢力 は和平交渉をしたくないから、国連職員を狙うわけです。

・メディアに関して気を付けること

伊勢崎:日本のメディアは、アメリカ寄りなので、先も紹介したアルジャジーラの映像を 見てほしい。英語だが、映像を見るだけでもガザで何が起きているかが分かると勧める。

・市民は、今、何を政府に呼びかけたらいいのか

伊勢崎:「ハマスと対話せよ」それだけでいい。 ハマスは政体としてしっかりしている。タリバンだったら人質を返さないでしょう。米軍 は20年かけて戦った「テロリスト」のタリバンに、2年前に負けた。その経験からハマス を「テロリスト」とは言わずに「インサージェント(非対称戦力)」と呼んでいる。この 違いは重要なことだが、日本人の多くは分かってくれない。アメリカの政府も何も学んで いないから、いまだにハマスをテロリストと言う。

・最後に言いたいこと それは「まず停戦!」

伊勢崎:「平和と人権」を正義とするなら、それは同時に両立しない。戦争犯罪や和平に つながる領土問題などは解決までに時間がかかるので、とにかく人命を救うことを最優先 にし、先ず停戦した後、時間をかけて話し合う。

日本は九条を持っている国だし反戦運動の歴史がある。どんな戦争であっても日本人は戦 争を止めようとするものだと思っていたのに実際は違っていた。ウクライナで戦争が始ま ると、護憲派や共産党までがゼレンスキーの演説にスタンディングオベーションを送った。ゼレンスキーはアメリカが武器を供与して戦っている国の「政治家」だ。彼は国民を総動員して戦わせているとんでもない人物だ。太平洋戦争で何百万人もの人々が犠牲になった国なのになぜこんな男を賞賛するのかわからない。

ウクライナの人々には、深く同情はするが、ゼレンスキー政権に対してはまったく別だ。 とにかく一人でも犠牲者を少なくするため、ウクライナでもパレスチナでも「即時停戦」 を訴える世論を形成していきたい。

 

●ジョニーと乱の5ミニッツ

川柳  これほどのガザの叫びを聞け世界  乱鬼龍

    耳済ませ脆い平和の割れる音    芒野

ジョニーH ヨルダンの子どもが発信した歌(替え歌)「心の鼓動2023ガザに思いを寄せ て(心の鼓動)~アンサムと40人のこどもたち」

*次回レイバーネットTVは12月13日(水)「映画と本で振り返る2023年」です。 「あなたの今年の一押し」(映画と本)を募集中→締切り12月9日24時 下記より https://labornetjp.jimdo.com/tv2


●192号(2023/10/25)放送 : 薄めても薄めてもなお汚染水〜国と東電の責任を問う

電通が作る「福島の安全」に大金を注ぎ込むのは?

〈薄めても薄めてもなお汚染水―国と東電に責任を問う〉

今回の放送が終わった時、ツクヅク東電も国も国民のことは何も考えていない。いかに原発事故を小さく見せ、人々に真実を知らせないかが最も大事なことで、それを電通に委託して推し進めていることが見えた。(報告:笠原眞弓)

企 画:堀切さとみ ジョニーH


司 会:ジョニーH
 ゲスト:おしどりマコ・ケンさん


★ジョニーH:埼玉県の戸田市の環境フェアに参加の「原発を考える市民の会」で、クイズをすることになった。その中に「汚染水」という言葉を使ったら、行政からその言葉は使わなでといわれたとか。経産省が言うように「処理水」してくださいと。でもここでは、バッチリ「汚染水」という言葉を使うと宣言。

◆飛び込んできた「作業員被ばく」のニュースからはじまった

おしどりマコ・ケンさんたちを迎え、ジョニーHさんはお二人への「ウエルカム・ソング」を披露!
先ず、早速マコさんたちがスタジオ入り直前に届いた福島第一で働いている方から届いた事故のお知らせメールを披露する。

「作業員が配管の掃除をしていたところ、ホースが外れて未処理汚染水が飛散し、20代から40代の作業員5人に放射能物質が付着した。現地病院で線量が下げられなければ、しかるべきところに移送する」というもの。メールは「汚染水をぶちまけ、大騒ぎだった。漏れた未処理汚染水の上を救急隊が歩き回り、汚染を広げていた」と続いていたということだった。
続けてマコさんは今ちょうど、IAEAが福島第一に入っているので気を付けているはずなのに、ドエライ事故になってしまった。今このようなずさんなトラブルが多いが、12年経って配管もだけど、東京電力も劣化しているようだという。そして、現場の人たちに何事もないように願っていると続ける。



◆おしどりマコ・ケンさんが支える東京電力定例会見


2011年の記者会見は100人以上の記者が参加して2~3時間、月~金まで午前、午後の会見だった。13年になると少し減ってきた。16年では、20人前後になった。19年、20年にコロナ禍となり、グーンと減ると同時に記者会見をやめようとした。それをマコさんが阻止して、小さなノートパソコンを使った遠隔の記者会見とし、月・木の週2回となった。今年、23年は出席者がおしどりマコ・ケンさんだけの時も。マコさんたちが行かなくなると、会見がなくなるというところまで来ている。でもアルプス処理水という汚染水の海洋投棄(東電・国は海洋放出と言う)の時は、一瞬増えたとか。


◆電通と行政の関係を暴く

マコさんは、長野のミニコミ誌『だあくらたあ』の編集長が、情報開示請求を大量にした結果、電通社員が政府機関に出向しているなど、関係が分かってきたと話す。
その中で、福島の「被ばく安全神話」つくりがある。
電通のやってきたこととして、3つにまとめている。


  ・口封じ(意見を言わせない)


  ・心封じ(不安に思ってはいけない)


  ・思想封じ(考えさせない)

気がついたきっかけは、伊達市が出した『こころの除染』という本。『だあくらたあ』の編集長がその内容に驚いて伊達市に、だれがつくり、どんな予算が使われたのかと問い合わせたところ、伊達市の予算で電通が作ったとの返事。費用などは、開示請求すれば出てくるというので、早速各自治体に関連資料の開示請求をして集める。ところがあまりに資料が膨大なので、おしどりさんたちなど周りに呼び掛けて究明チームを作ったとか。


◆「電通」主導の被災3県のポジティブ露出とは——「安全」は禁句

なぜ?
「ふくしま農林水産安全・安心メディア発信研究会」と題され福島県内9社のメディアが参加している会がある。そこでは原発被害を言うのがネガティブ、「復興ガンバロウ」はポジティブということで、そんな言葉を並べる発信法などをレクチャーしていたのだ。

例えば、
ポジティブ露出ベスト3:フラガール、コメ全袋検査、福島の桃をタイへ初出荷
ネガティブ露出ベスト3:子どもの甲状腺検査、中間貯蔵施設問題、アイナメから高濃度セシウム
「安全」という言葉を使うと、「危険」を連想させるから使わないとか……と、思わず笑う。

他にも、メディアセミナーやメディアツアーを行って報道関係者に安全を刷り込こもうとしているし、複数の子育て中の女性インフルエンサーに福島の○○はおいしかったとブログに書かせてもいるとか。
それも何を見せられ、何を隠されていたかが、情報開示によって分かったことで、そのことはとても重要なことだったという。ただし、開示請求は、紙の枚数によってお金もかかる仕組みになっている。黒塗り(所謂「海苔弁))のものもあるが、何が隠されたかによって分かることもある。


◆電通に支払われた金額は?

TOKIOを使ったCM・広告代は、税金からなんと福島県と農水省合わせて電通に55億円。また、原発事故直後の2012年の電通に支払った額と、22年23年の「アルプス処理水」を海洋投棄するための電通に支払った額が同じだという。どれくらい汚染水の海洋投棄が政府にとって重要なのか分かる。

◆請戸の海の魚は安全か?―吉沢正巳さん(希望の牧場)の映像―


吉沢さんは、浜で魚を釣ってはその放射能を検査に出している。請戸海岸でテントを張って魚を釣っている希望の牧場の吉沢正巳さんの映像が挿入される。
公的機関では、1検体1万円もして、なんでトリチウムとセシウムだけしか測らないのか、他の核種は安全なのか、問題にされると困るのか?と疑問を呈する。そして、情報を待っているだけではだめだから、自分たちで釣って、測ってくれる研究者に運ぶことにした。自分たちでやることが大事と。5年はやろうと思っていると彼はいう。もちろん、浜での行政の「不思議な行動」も見える。

◆タンクの水の中身はなぁに!


放出寸前の水は、ちゃんと測定しているとマコさん。トリチウム以外では、セシウム137、134、ストロンチウム90、ヨウ素129、炭素14も測っているけれど、「測っていない」といわれているのは、海に流した後の海水の迅速測定で、トリチウムやセシウムのみの測定ということを問題視しているのだと思うと。


◆今流している水はフレッシュ排水

放射線濃度が低いから薄めるのが楽
続けて吉沢さんは「5年くらいたったら濃いものを流すのではないか」とのことたが、それは違うという。
東電は、排水タンクの置き場がないから廃炉に邪魔なので海に流すと言っていたが、最近は方針が変わった。今積んであるタンクの中身は、事故と当初のもので、線量がとてつもなく高い。そのまま放っておけば、勝手に減っていくので、新たに出てくる汚染水を薄める方が効率的と考えて今出てくる汚染水を流すことにしたという。


◆廃炉は夢のまた夢……だから廃炉の定義を変える?

ここで驚くべき事実を知る。廃炉まで30年と決めているが、これも夢のまた夢。廃炉に関する記者会見を「中長期ドリーム記者会見」と笑う。

日本の法律の廃炉の定義は

・放射能廃棄物が一切なくなって、放射線管理区域の規制が取れるとき。つまり、一般の空間と同じ状態になるときが「廃炉」なのだ。
30年後にタンクゼロはあり得ないから、その前提がおかしいと断言する。

◆だから廃炉の定義を変える?

地元が望めば!「地元」って誰? もっと驚くべきことは、なんとその廃炉の定義を変えるというのだ。

・ある程度瓦礫など残っていても、地元の人たちが望めばそれを廃炉とする! あくまでも地元の要望であって、地元との協議だという。このうさん臭さは何なのか!「地元」とは誰なのか? 除染も、年間20mm㏜の避難解除も、地元の要望だと東電・行政側は言い切ったとか。

◆セシウムが魚に出ている
港湾内だがここ数年、100㏃を越えた魚が度々出て、出荷制限もかかっているとか(表を示す)。ということは、事故そのものによる海洋汚染である。アルプス処理水の魚の前に、以前からの海産物汚染をどうにかしなければならない状況だ。 


◆メディアの作為報道 汚染水の放流を「受け入れる」なんて言っていない

ジョニーHさんは、地元漁連などは出荷できるものをと、努力してやっと2割くらいが出荷できるようになっている。ところが東京のメディアは「他の地元の方たちは放流に反対しているが、旅館組合などは容認しているという報道だった。本当のところは?と問う
マコさんは、それは全く違うと。2020年のこと、地元民に処理水の放流の意見を聞く会を設けた。福島県の旅館ホテル生活衛生同業組合の理事長の映像が流れる。「…大きな経済的なダメージをいまだに受けているが、それは風評被害ではなく実害だ」続けて「今回、どうしても放出するなら、他県で放流させるわけにはいかないから”国による故意の加害行為による損害”として、長期的に補償をしっかりするように」と訴えた。

ところがそれを報道ステーションが、「反対する人もいるけれど(少数派に聞こえる表現に)、国に補償を求めたうえで海洋放出を容認する(多数意見の感じ)」と簡単にまとめていた。
ジョニーHさんは加えて、しかも、福島県内では報道内容も違うようで、全自治体の80%が海洋投棄に反対していて、差し止めの決議を全会一致で出しているところもあるのにと。


◆放出中の汚染水の80%前後が半減期1570万年のヨウ素129とは

マコさんが気になっている核種にヨウ素129がある。告示濃度限度(人間が70年間毎日2ℓ飲んでもいいという基準で、環境中に出せる濃度。100年後の海はどうなる等は一切評価ナシ)は核種によって違い、ヨウ素129の告示濃度限度はたったの9㏃。しかも半減期は1570万年と、気が遠くなるほど長い。1回目に投棄したものはヨウ素129が2㏃入っている。現在、3回目のものまで発表されているが、残っている告示濃度限度比の総和(トリチウム以外)の80%前後が、ヨウ素129なのだ(表による説明)。
この濃度で放出され続けた場合の100年後の海の生態系などの考察は、全くされていない。ヨウ素129が環境に一番影響を与えるだろうと、一応環境省・東電なども考え、海藻のヨウ素129の測定が昨年の4月から始まった。

◆汚染水の放出で、新たな輸入規制が始まったと中国・韓国を非難するが

農水省の事故直後からの輸入規制を撤廃していった国の資料を示す(表)。2021年にアメリカ、イスラエルなど3ヵ国が、22年に英国、インドネシアの2ヵ国、23年にはEU、アイスランド、ノルウェースイス他1ヵ国が撤廃している。汚染水を流す前から規制しているのは、7ヵ国のみで、その中に中国、韓国、台湾などが入っている。それをもって「流したから輸入規制するのはけしからん」と騒ぐのは、少し違うのではないかとマコさんは言う。



◆質問コーナー
・他国(中国、韓国など)からの流出批判に、原発のある国は流していると日本は反論しているが。
 —もちろん原発のある国は日本も含めどこも流しているが決定的な違いは、今回の日本の放出は直接デブリに触れていること。この水と同じような汚染水は、再処理工場の排水が近い。例えば、東海村の再処理工場、フランスのラーグ、イギリスのセラフィールド。でもイギリスは海への排水はなくなっている。他もトリチウムの濃度規制(薄めれば無限大に流せる)の他、各放射能物質に総量規制もあるので、バンバンは流せない。
今「総量規制のない国は日本以外にあるのか」を環境庁に問い合わせているが、まだ返事はない。

・おしどりさんの執念は何か?

-歯磨きするように考えようということかもしれない。歯磨きは他人にしてもらえないし、毎日したい。しないと(考えないと)気持ち悪いから、かもしれない……。その言葉に、スタジオは唸った!

・廃炉迄どれくらいかかるのか?


  —東京電力の社長などが並んでいるときに、廃炉迄何年かかるかと質問したことがあった。すると「廃炉まで30年。それまで見続けて、責任を取ります」といった。その回答を受けてマコさんは「30年後、どこで何をしていらっしゃるか、一人ずつお答えください」と返したと笑う。


*休憩時間には乱鬼龍の川柳が登場!

  汚染水ウソデタラメも垂れ流し  乱鬼龍

  処理水はデブリの味を明かさない 木根川八郎

次回は11月8日 ウクライナ・パレスチナ問題の予定


●191号(2023/10/11)放送 : ヤマト運輸3万人一斉首切り〜組合つくって声あげる

レイバーネットTV(10/11)報告:ヤマト運輸3万人首切り問題を深掘りする

いまヤマト運輸で進んでいる3万人大量首切り。10月11日のレイバーネットTVでは、この問題を取り上げた。関心も高く、アーカイブ視聴数はすでに2500を超えた(10/18現在)。番組には、契約解除という名で解雇通告された高本博純さん(ヤマト運輸国立営業所/三多摩労組加入)が出演して、その実態を語った。なにより驚いたのは、高本さんが契約解除を知ったのはヤフーニュースだったこと。そんな大事な話をヤマトは本人より先にメディアに発表していたのだ。高本さんは「クロネコDM便」などの配達業務に携わってきた勤続26年のベテランである。「クロネコDM便」の郵政移管に伴い、高本さんら3万人の「個人事業主」が切られる。しかし声が上がらない。それは「委託契約」というマヤカシの制度を会社が悪用して、「解雇でなく契約解除」という形でやろうとしているからだ。それとどうたたかっていくのか? 三多摩労組書記長の朝倉れい子さんが大いに語った。また「ヤマト協業」で混乱する郵政職場の実態を戸村学さんが紹介した。ぜひアーカイブを活用してほしい。(レイバーネットTVプロジェクト)

熟練が支えるクロネコDM便 「個人事業主」という仮面をはがせ

●詳細報告(笠原眞弓)

〈ヤマト運輸3万人一斉首切り〜組合つくって声あげる〉

心を痛めた大事な人からの封書を受け取り、メールもメッセンジャーもしているその人に

便箋も封筒も切手も選んで投函した。その手間がなんとも言えない時間だった。

私たちの身近なクロネコDM便を日本郵便に丸投げして、その配達員の雇用が危ないとは、

全くの寝耳に水だった。同じような仕事をしているヤマトと郵便局の方のお話を伺ううち

に、仕事に誇りを持つ素晴らしさとそれに敬意を表さない会社とはなにかと思った。

 

司 会:堀切さとみ

ゲスト:朝倉れい子(全国一般三多摩労働組合書記長)

    髙本博純(同労組・ヤマト運輸国立営業所所属勤続26年)

    戸村学(郵便局勤務・郵政ユニオン)

★「クロネコDM便」とは:大和運輸の一部署。カタログやパンフレット、チラシを郵便受

けに配達するもので、全国へ送ることができ、事前契約をした法人などが利用できる。

◆マスコミを通しての衝撃の3万人首切り通知に黙っておれん!

2023年6月19日、そのクロネコDM便が日本郵便に全面移管されることが、マスコミ報道さ

れた。ところが、当のDM便の配送担当者らには事前に何の話もなく、その時はじめて自分

たちの仕事がなくなり、その後の保証も何もないことを知る。

首を切られる当人である高本博純さんは、たまたま今年の1月に国立市で全国一般三多摩

労働組合(以下三多摩労組)などが行っている「困りごと相談」とお節料理の配布の現場

で出会い、職場のハラスメントの相談をしていた。

その時彼の話を聞いた多摩労組の朝倉れい子さんは、労働組合法の労働者と言えるし、労

働基準法上の労働者の可能性もあること、その場合は未払い残業代も請求できると伝える。

その時は個人事業主契約で、労働者でないからと高本さんは迷っていたが、6月の首切

り問題が起きた直後に彼は朝倉さんに電話をする。

◆ヤマトと郵政はライバル同士だった

朝倉さんはクロネコDM便ができるころから、郵便局と郵便法をめぐっての争いを見てきた。

その過程で、配達料金を下げる必要があり、郵便局は単価を下げるために労働者を非正

規労働者に変えてきたし、DM便もさらに下げるために個人事業主に変えた。ヤマトは、そ

の後さらにDM便が不採算部門になったための今回の対応だろうという。雇用関係があれば

労働者になぜそうなったかなどきちんと説明する責任があり解雇も容易ではないが、「個

人事業主」であれば簡単に切り捨てられるからである。

高本さんは、40代の終わりから26年間この仕事をしている。長期に働けると思っていたの

に今回は、突然のことで戸惑っているという。

配達の単価は1件につき21円の契約で、1日5000円の収入が欲しければ、250件扱うことに

なる。配達は夜の7時台に終わらなければならず、8時を過ぎると始末書を書く。配達の方

法は自転車、バイク、車など個人に任されていて、ガソリン代は自分持ち。月におよそ12

万円の収入だ。

今回のことでは、仲間同士で話し合うとか、勉強会をするという雰囲気は、職場にはない。

◆我々は「個人事業主」ではないから闘う!

高本さんは、三多摩労組に個人事業主ではないと言われ、それなら会社と闘おうと労組員

になり、三多摩労組はそれを受けて会社に団体交渉の申し入れをする。するとヤマトから

は「歩合給を払っているから労働者ではない」という、的外れの回答が返ってきた。つま

り労基法でも「オール歩合はダメ」という条項がある通り、労働者でも歩合給で働く人は

いっぱいいるので、この回答は何の意味もなく、労働基準法の労働者に該当すると詳しく

書いたものを会社に渡す。

ヤマトの場合、3万人の解雇というのは、社会的な影響が大きいので組合ニュースを発行

し、記者会見もした。東京新聞と朝日新聞が記事にし、MXテレビが取材をしたという。

◆ヤマトの反論の破れはどこ?

ヤマトはDM便の配達員を個人事業主とする反論を送ってきたが、全く法律に則していなか

ったという。

1「個人事業主」は自主的な契約書を交渉して決めることができるのに、ヤマトはもう決

まった書式に、本人の氏名を入れればいいだけになっている

2 業務仕様書には、誰もが1通21円と決まっていて、交渉の余地がない

3 労働基準法の労働者の基準として、場所的、時間的拘束があり、それに該当する

以上3点のことから、個人事業主として自分の努力と裁量によって収入が増えていく余地

が全くないので、個人事業主とは言えないということだ。

ヤマトの弁では、自分の好きな時間に、自分の好きなところに配達しているのだと言って

いるが、それはヤマトの_業務仕様書_を見れば、一目瞭然虚言なので、そこを法律的に闘

っていくと言い切る。

◆「委託」って何なのか? 規制だらけでも「委託」?

高本さんは、仕事中は制服着用、名札と管理用の電子機器を首から下げて、完全に管理さ

れている。

電子機器の画面に映し出されたのは、1、持出報告(1点づつバーコードの読み取り)2、

配完報告

(配達が終わった知らせ—このシステムだと、印鑑がいらない) 3、持戻報告(配達物

を差出人に戻す)4、終了報告……と続き、そのつど入力、確認が必要だ。これで個人事

業主とは、全く言えない。

◆DM便をすべて引き取る郵政の労働者 戸村学さんに聞く

では、DM便を引き受ける日本郵便はどうなのか。戸村学さん(郵便局勤務)は、開口一番、

大丈夫ではありませんと断言する。今ヤマトが扱っているDM便を郵政が引き受けると、

現在の3~4倍の業務量になる。今でさえ目いっぱいで、しかも16時30分には終わることに

なっている中で、ヤマトのDM便を増やすことは難しいと。現に、DM便を当初20%から徐々

に増やしていく予定だったが、現在12%増やしただけで、目いっぱいになっているので日

本郵便側がDM便を全量引き受けられないと思っているというのだ。

「人手」ということであれば、ヤマトで働いていた人たちが日本郵便に移行することは出

来ないのかという質問に、戸村さんは答える。

郵便業務は1日2日で出来るものではなく、経験を積んで身につくもの。かなり自由な働き

方をしていた人たちが、日本郵便のやり方になじむかどうか、日本郵便側も懸念を持って

いるのではないかという。

◆驚きの発言 「2025ビジョン」日本郵便の首切り計画

ここで、戸村さんの驚きの発言が飛び出す。「いま郵政では「2025ビジョン」というのが

言われている」と。これは、3万5千人の首切りをめざしたものだ。そんな時に、ヤマトか

ら3万人の受け入れは出来ないだろう。

社内では他にもパワハラがあり、自殺者がいるがオープンにされていない事件もある。

◆社会的弱者が切り捨てられる社会

ヤマトでは、更に3万人の他に、契約社員やパートの人たちも、5千人が解雇されるという。

パートの中には、障がい者も含まれているとか。

ヤマトはこれまで障がい者の雇用をDM便で行ってきて、イメージ的にも良い印象を作って

きたが、その人たちも今回の解雇には含まれている。DM便ばかりでなく、荷物の仕分けな

ど、配送業務の後方支援の職種では、生活保護を併用している精神疾患を持つ人なども多

く働いている。その人たちも首切りの対象になるという。

◆始まった解雇反対の署名

身近なことなので、ネット署名が始まっていて、すでに6万人に達しているという。

署名サイト: https://chng.it/BVDz5mKbrY

◆会場、視聴者から

質問:今回の会社の目的は、ある人は「儲からないからやめるのがヤマト/儲からな

くても取扱数を増やしたい郵政」と言った。ということで、2つの質問がある。問1、会社

の真の狙いは何か? 2、配達員は家族構成まで分かるし、名前を書いていないものでも

正しく配達していくには、熟練しかないと思うが。

・戸村さんは答えて

今回の事は、国の指導があるのでは?と思うけれど現場が求めているのは、熟練者です。

質問者:郵政が民営化したのに公営化に戻る感じですね。

戻った方がいいですよと戸村さん。「もの」が84円で全国に届くなんて、すごいこと。何

人もの手がかかわって、正しく配達されるのですよ。配達員は、荷物が1個でも100個でも

行かなければならない。

質問者:それだけのお怒りは分かります。ストライキ、やりましょうよ!

戸村:私は春に「一人ストライキ」をしましたよ(笑)

・朝倉さんが補足する ビックデータがらみではないか!

長年ヤマトと郵政がDM便をめぐって争ってきたのに、ここにきて手を打ったのは、うがっ

た見方をすると、今の日本ではビッグデーターの取り扱いが大きな金儲けの手段になって

いるからでは。今郵便法に守られて個人情報は保護された形になっているが、そのデータ

ーを国が管理して、国の金儲けの手段にしたい気持ちがあるのかもしれないという。

裁判までしていったん落ち着いたのに、郵政の方のメリットは考えられない。従って働く

人の負担や適切に配達されることは、両社ともどうでもいいことではないかと思う。

・高本さんは契約書の第1条から違反しているヤマトへの怒りを語る 

契約書を守っていない。第1条で「誠実」をうたっている。それなのに会社は我々に誠実

ではない。交渉の中で、小出しにしてきて「慰労金(10年以上働いた者に対して一律7万

円)」とか仕事の斡旋も言ってきたが具体的な斡旋ではなかった。

・会場から:一般の人にとっては「再配達」が身近なもので、そのことを取り上げている

・戸村さん:現場を知らない提案ですとバッサリ。再配達の有料化というが、料金の徴収

方法はどうするのかが問題。「家にいたのに」と言われると、どうしようもない。実現し

ないと思うと。

・朝倉さん:労働力を機械に置き換えていくことではないか?と考えている。利用者の分

かりやすい問題で処理してしまうと、働く人の存在が落ちてしまう。郵便物は「親書」で

すから「相手に届くまでは何度でも配達」が原則です。

最後に一言

戸村:SNSを見ていたら「まだ雇用期間が2、3カ月あるのだから、自分で次の仕事を探せ

よ」との書き込みがあった。それだけでは済まされない話ではないか。世の中全体が、真

剣に考えてほしいと思う。

高本:70過ぎているので、ぜひ来てくれというところはないのでは。こういう年寄りが、

路頭に迷わないように、誠意ある対応を願う。

朝倉:個人事業主扱いされている問題がある。高本さんは20年以上働いているので、契約

社員だったら、5年で無期転換されているはず。そうなれば、雇止め、契約切れは無い。

「労働者性」があれば、救済する法律を作るべき。ところがいま日本は、労働者性があっ

ても、救済する法律はない。それを勝ち取るために私たち労組が頑張っている。困ってい

る方、是非ご連絡を。ヤマトはじめ様々な労働問題の相談に応じている。

連絡は→三多摩労働組合 043-571-1953


●190号(2023/9/27)放送 : 話し合いを求めることは罪なのか?−尾澤孝司事件「9.11判決」を考える

労働運動は国境を越えた信頼に支えられて

レイバーネットTV190号(9/27)報告〈話し合いを求めることは罪なのか?-尾澤孝司事件「9.11判決」を考える〉

 

9月11日、新橋駅前で尾澤邦子さん、キムウニョンさんらと再会し、思わずハイタッチ! 尾澤孝司さんの一審判決の日だった。判決後に「放射能汚染水放流中止日韓市民徒歩行進」に参加していた。韓国サンケン解雇撤回闘争から数えて7年も経ち、いま彼女らは、2回の韓国サンケンの裁判闘争を共に闘った尾澤孝司さんの裁判を支えている。何しろ労使問題にせず、あくまでも警備法廷で裁判をしようとしていた意図は何なのか、見守っていきたい。(報告:笠原眞弓)

企画・司会:尾澤邦子

ゲスト:上野真裕弁護士 尾澤孝司 

◆韓国サンケン闘争と尾澤事件のあらまし

 ※韓国サンケンは、埼玉県新座市にあるサンケン電気の100%出資会社

・第1次サンケン闘争: 2016年の労働組合員全員解雇の通告に対し、日本への遠征闘争を行う。日本の「韓国サンケン労組を支援する会」と地元有志による「韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会」がバックアップ

・2017年6月に解決し、職場に戻る

・第2次サンケン闘争:2020年7月に本社は突然韓国の会社の廃業をHPで発表

・日本では、引き続き「韓国サンケン労組を支援する会」と「韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会」が韓国サンケンの労働者と連帯して抗議活動を行う

・2021年5月6日に韓国の慶南地方労働委員会から「和解勧告」が出される

・事件のあった5月10日の「埼玉市民の会」定例行動日に尾澤さんは「和解勧告」を携えて本社の責任ある人との面会を求め、門に向かう

・警備員に阻止され、押し合いになって敷地の外へ押し出される

・会社の通報により駆けつけた新座署に「暴行」容疑で逮捕され、警備員に対する「威力業務妨害」が付いて起訴され12月27日までの7か月半、異例の長期間勾留される

・裁判がはじまったのは昨年の2022年の11月。判決が出たのは2023年9月11日

◆判決文に書かれていたこと(解説は上野真裕弁護士)

判決主文「被告人を罰金40万円に処する。未決勾留日数のうち、その1日を5000円に換算して、その罰金額に満つるまでの分を、その刑に算入する。訴訟費用は被告人の負担とする」(朗読=後呂さん)

上野真裕弁護士も、この判決の罰金刑は意外だが、求刑にあった懲役を課すのはバランスが悪いと、このようになったのではないかと考察する。

判決理由には、尾澤孝司さん(以下孝司さん)が警備員にプラカード等で押して植え込みに倒れ掛かったことが暴行と認定されたのだが。

尾澤邦子さん(以下邦子さん)は、相手も同様に押していたので、納得できないと。

◆「威力業務妨害の成否」は成り立つのか

「威力」と「妨害」が生じたかが判断されたのだが、「威力」は、警備員と孝司さんの間で押し合いがあったことを「威力」とし、「妨害」は3人の警備員が対応したことが、業務妨害になるという理由が述べられたと上野さん。

◆この行為は「労働問題」対「労組からの委託がない」の対立

形式的に威力業務妨害に当たるとしても、その行為自体は「本社側に話し合いを求めて立ち入ったのであって、紛争解決の労使交渉の一つだから違法性はない」がこちらの主張。ところが、韓国サンケンの労組から本社との交渉を個別的に委任されていないから「労働問題ではない」との裁判所の解釈だった。

◆孝司さんは語る

判決には、2つの認識違いがある。

1つ、なぜ本社の門に近づいたかは無視され、いきなり警備員ともめたことになっていた。

2つ、韓国サンケンの労組委員のキムウニョンさんが裁判所に呼ばれて来日し、日本の市民と韓国の労組間の信頼関係の下、闘争をしてきたことを証言したが全く顧みられなかったこと。

また、判決当日韓国サンケンの労組員他、今闘争中の日系韓国企業労組などが来てくれたことも、自分にとって力になるし、労働者の国際連帯を実感させるようだった。

◆何を恐れる裁判所

邦子さんは、裁判の様子を呆れながら報告。

まず何度も大法廷でと要請したにもかかわらず無視され、44人傍聴席の中法廷で行われた。しかも警備員が出廷するときは大きなついたてを立て(スケッチを表示)、裁判長席から見えなくなる傍聴席を減らしたという。判決当日は、法廷の廊下に警察官が。訊くと、裁判所に応援を頼まれたと。邦子さんは、三権分立は一体どうなっているのかと、呆れる。

◆もちろん控訴です

無罪を主張していたが、1審は受け入れられなかったので、控訴したと上野弁護士。判決は残念な結果だったが、検察の言い分がすべて認められたわけではなく、懲役刑が選択されなかったことも事実。裁判所も検察側の主張を全面取り入れるのは妥当ではないと考えたのだと思う。ではなぜ無罪に踏み切れなかったのか。なぜ孝司さんがサンケン本社内に入ろうとしたかの妥当性については触れず、サンケンとの労使紛争なのに納得がいかないので控訴審で争いますと、きっぱりと宣言。

◆労使問題の解決後、会社は裁判所あてに嘆願書をかいた

韓国側の労組役員キムチニョンさんとのオンライン(通訳:安田幸弘)がつながる

尾澤さんへの判決は、ひどいものだった。資本の側が行った犯罪なのに、支援者を犯人にしていて不当なもの。

尾澤さんの逮捕後、韓国では労組と韓国サンケンとの間で和解が成立した。その時、韓国サンケンの代表理事が裁判所に嘆願書を書いた。そこには、尾澤さんの行動は、韓国サンケンと労組の争議過程で起こったと明示していた(それについては、裁判所は触れていない)。

労使の交渉の一部であったとする明確な書類がなかったと、裁判所が尾澤さんの立場を認めなかったことは、残念だ。

尾澤さんと私たちは長年の闘争を共に闘ってきて、労組問題の先輩でもあり、家族のような、父のようでもある存在だ。

今回はコロナのために会社の前に行くことは出来なかったが、自分たちの声を私たちに代わって会社に伝えてもらっていると話したことがある。

私たちの所属する民主労総は、120万人の組合員を持つ韓国の最大の組織だが、これまで外国人に感謝の盾を贈ったことは一回もなかったが、今回尾澤孝司さん、邦子さんに感謝の盾を贈った。設立30年の歴史の中でとても意義のあることであったと裁判の中でハッキリ証言したが、それを判決に取り入れなかったことは、腹立たしく、不当だと糾弾したい。

◆次々起きる日系韓国企業の労組の闘い

韓国の安山市でワイパーを作っているデンソーが親会社の「韓国ワイパー」の闘争を紹介する。愛知県にある「デンソー」が親会社だ。「韓国では、耐えられないほどの無念に対して、最後まで闘うという決意を表わすのに剃髪がある」と剃髪の分会長が写る。2011年に韓国ワイパーを整理すると280名が解雇対象になる。労使協約書には「会社廃業の時には、労使と合意する」とあるので、株主総会の時期に日本の親会社デンソーに対して12日間の日本遠征闘争をし、8月に労使合意で再雇用支援事業をすることで解決した。

この闘争を支えているのは「同志」であり「万国の労働者よ、団結せよ」で、そのことの大事さをこの闘争を通して知ったという。

現在は大阪に本社のある日東電工が100%出資の韓国オプティカルハイテックという会社が、火事になって1か月後に会社を閉めると社員を解雇した。現在闘争中である。そんな中での孝司さんの裁判である。その点をウニョンさんに聞く。

これまで日系企業に対する様々な闘いがあったが、労働組合が出来て力を持ってくると以前は国内から資本を引き揚げていた。韓国サンケンなどは配置転換などで、十分に吸収できたのにそれをせず、解雇した。サンケンやデンソー、日東工業などは、資本の利益のために労組をつぶして韓国で事業を続けている。これに対して日韓の労働者が共に闘う国際連帯の成果もあった。

◆控訴審への思い

孝司さんは、1審は韓国はじめ多くの人に励まされてきた。これからも日系企業の問題が、各地で起きるかもしれないけれど、ともに闘っていきたいと思う。

邦子さんは埼玉の文化活動グループ「ゆいの会」が作った素敵な韓国サンケン労組員の似顔絵などで、一緒に門前闘争をした気持ちになれたし、文化活動のすばらしさを紹介しました。

◆闘争を支えていた地元の市民の会のしろたまさん、後呂さんの一言

しろたまさん→埼玉の恥ずべき企業、警察、検察、裁判所の三権分立どころか一体の恥知らずを粉砕すべく、これからも共に闘っていきたいと、元気よく決意表明した。

後呂さん→第2次闘争の時、韓国から来られないと知り、それなら私が代わりにと2年間やってきた。これは労働争議なので、無罪を勝ち取りましょう。

◆質問コーナー

・埼玉法廷は警備法廷だったが、東京高裁に行っても警備法廷は引き継がれる可能性が高い。このような微細な事件が、ヤクザやオウムなどと同じ警備法廷で裁かれる可能は?

・答:東京高裁がどのような取り扱いにするかまだ分からないし、質問の答えとずれるが、1審の時に現場の映像を流していてそれが被告、弁護士はモニターで見たが、傍聴席では見られない。それは「裁判の公開」に反するのではないかと思っている。控訴審でも言いなりにならず、我々が声を上げ続ける必要があると思っている。

・孝司さんに質問。韓国サンケンのウニョンさんが「お兄さんであり、お父さんであり、強い信頼を持っているということだったが、孝司さんから見ての彼らはどうでしたか?

・答:ありがたい言葉です。でも逆に韓国の労働運動がなぜ頑張れるのか、なぜ強いのか、直に接して学べてよかった。例えば「あきらめない」ということ。会社の廃業は大概労働側が負けるのに、あきらめないで闘いを続けていくところなどだという。会社も日本まで来て毎日門前闘争を続けるとは思わなかっただろう。そのことで、日本でも支援が広がったし、学ぶべきものが多かった。

・お知らせ:KBSTVが韓国労働者の日本遠征闘争を支援してきた尾澤孝司と邦子に密着取材してきたが、12月に韓国で放送される予定。間に合えば、レイバーフェスタで紹介する。

◆ジョニーと乱の5ミニッツ

ジョニーHの替え歌 裁判長の名前を織り込んで不当裁判を暴く

川柳:たたかいの中に友あり明日があり 乱鬼龍

   法服の汚れもキャリア静粛に 笑い茸


●189号(2023/9/13)放送 : 「やさしい猫」から学ぶ入管問題

異質なものを排除する日本人の見えない壁に風穴を開けたい

「やさしい猫」がNHKのドラマで、9月25日から再放送があるくらい大人気だ。テレビのない私に友だちが、本を貸してくれた。ぐんぐん引き込まれた。何しろ七面倒くさい法律を分かりやすく説いているし、物語としてもドキドキだし…。フィクション小説の著者は、だからといって入管法など、事実と違う作り事を書くわけにはいかないと、緻密な下調べをしている。だからこそ、この物語は人の心を打つのだと思う。この小説の誕生に深くかかわった指宿昭一さんの持ち込み企画だが、この小説が読まれ、ドラマが観られることで、日本国内に住むすべての市民(とあえて言う)が直面している、バカ気た入管の外国人に対する差別対応をやめさせる力になると信じたい。それにしても深刻な問題にもかかわらず、スタジオは終始、笑いの絶えない明るい雰囲気で進んでいった。(報告=笠原眞弓)

 

◆指宿昭一さんによって「やさしい猫」の概要が語られる

小説「やさしい猫」は、クマラさんとミユキさんの出会いから結婚、そして途中、非正規滞在になってしまったクマラさんが裁判に勝利するまでをミユキさんの娘マヤちゃんが語ったもの。小説をもとに同題のテレビドラマともなり、人気を博する。(6月にNHK地上波で放送。9月25日~29日までBS4Kで再放送)

◆入管の収容者が救急車も呼ばれず亡くなった?「勉強会」という食事会のはじまり

著者の中島京子さんは、新聞に連載小説を頼まれる。以前から気になっていた、牛久入管での死亡事件のことを思い出した。そのことを書きたいが、法律的なことをちゃんと押さえたいと友人の弁護士に相談。すると、弁護士と元入管職員、行政書士など、複数のブレーンとの勉強会(食事会)が複数回設定された。その中に指宿さん(ハムスター先生)がいらした。第一回の集まりから、相当厳しい現実が滝のように流れてきたと中島さん。しかも帰り道で、友人の弁護士に手をしっかりつかまれて「逃げないでね!」と言い続けられていた。一方指宿さんたちも、はじめは緩くしようと打ち合わせをしていたのに、激しすぎたと反省していたとか。

◆小説だけどウソをつかないを通した

中島さんはフィクション作家だが、この作品の中では「ウソをつかない」と決めていた。勉強会は続き、模擬裁判も数回実施した。豊富な事例を持つ弁護士によるポロッとこぼれる話が、小説にリアル感を与え、膨らませていったとか。中島さん自身も模擬裁判で、参考人質問を受けているうちに、その人の気持ちがつかめていき、それがエピソードとして小説を膨らませていった。

◆クマラさんはなぜ在留資格を失ったのか(小説のはじまり)

ミユキさんは、スリランカ人のクマラさんと東日本大震災後のボランティアの場で出会い、その後帰宅してから偶然再会して、結婚することになった。結婚パーティの日取りも決まっていたのに、クマラさんの勤務先が倒産。ところが彼はミユキさんに本当のことが言えず、嘘をついて就職活動をしていた。そのうちクマラさんのビザも切れてしまい、内緒にしていられなくなる。二人は入籍して、クマラさんは晴れ晴れと品川入管へ行くのだが、その最寄り駅で職務質問にあい、「非正規滞在」の外国人として入管に収容されてしまう。物語は裁判で勝訴するまで続く。

◆2017年(五輪前)だからクマラさんの在留資格の更新ができなかった 

国はオリンピックを控え、治安の維持のために外国人の”効果的排除”を打ち出した。つまり、在留資格の厳格化を通達したのだ。これまでならクマラさんの例では在留資格がとれたはずなのに、このオリンピックに向けた行政の姿勢が彼を窮地に追いやったという。2016年の東京新聞はこの厳格化を批判的に報道しているが、このころは一般に知られていなかっただけに、どうしても小説に書いてもらいたかったと指宿さん。続けて指宿さんは、品川駅前は交通違反の取り締まりの強化月間のよう不法滞在者の検挙をしているので、手前の駅で降りて、タクシーで行くようにとアドバイスしていると。

◆「在留資格がほしいから結婚したんだよね」と責められて

ミユキさん自身、在留資格がどういうものかを知らないでクマラさんと付き合っているのだが、書いている中島さん自身何も知らなかった。ところが入管職員の質問は、例えば「在留資格が切れてから結婚したよね」「在留資格ほしいから結婚したんだよね」と当事者の気持ちとずれながら、そう言われるとそうではないとは言えないけど、自分の感覚とはずれていると、揺さぶられていくのもブレーンたちに教えられたことだとか。事例を持たない弁護士の中には、そんな質問の突っ込みを知らない人もいますよと指宿さん。

◆外国人と結婚する(家族になる)という周囲の反応

ミユキさんとクマラさんの結婚は、周囲の反応も描かれる。ミユキさんの山形県人のお母さんは「いい人だかどうだかは、関係ねーやな。スリランカ人との結婚だば無理だろうや」といい、前夫(マヤちゃんのお父さん)の家族にも外国人だから信用していいのかと聞かれるし、友だちの「騙されていないか」や「いい外国人はいいのよ」の言葉も微妙だ。このような言葉は、よくかけられるが、実際にあるであろうことを書かないわけにはいかないと中島さんは言う。

◆ビザのための結婚ってそんなに悪いこと?

「クマラさんは頑張っているし、いい学校出ているし、立派な仕事だって持っているし」とミユキさんに言われることがクマラさんにとって失業したと言えなくなる原因の一つだったかもしれないと中島さんはクマラさんを思いやり、ビザのための結婚がそんなに悪いことなのかと疑問を呈する。日本人だったらお金のために結婚する人もいるのになぜ入管では、そうではないと証明しなければならないのかがよくわからないと中島さん。一方で「偽装結婚」と言われるのが嫌でビザがとれるまで、結婚したがらない人もいる。実際には、当事者や家族ですら在留資格の制度についてよく知らないし、弁護士でも知らない人がいるという。

◆帰国を促す作戦のための医療不処置対応ってアリなのか

指宿さんは、牛久入管で体調を崩した収監者に対し入管では何の対応もしないので、外から救急車を呼んだが、追い返された経験がある。ドラマの中でミユキさんがブチ切れる場面がある。驚くべきことに、「辛くなれば借金してでも帰国したくなるだろう」そうさせるために入管は治療を極力しないと、入管の悪魔の言葉を指宿さんは私たちに伝える。名古屋入管で食事がとれなくなって亡くなったウシュマさんの場合もそれに通じるという。

◆ウシュマさんの事件が公になったのは遺族の積極的な訴えがあったから

2021年にウシュマさんの事件の実態が明らかになったのは、なんといっても被害者の2人の妹さんが実名で日本のやり方に異議の声を上げたので、マスコミも取り上げたし、一般市民も関心を持ったからという。やはり当事者の声は強く人々に響くのだろう。多分、残された遺族が、だんだんとこれは個人的な問題ではないと気づき、公に解決する必要性に気づいたのではないか。それは大事なことと指宿さん。

◆クルド人(難民)の問題も特徴的にある~日本生まれのハヤト君の悶え

マヤちゃんのボーイフレンドとして登場するハヤトくんは仮放免なので、入管の許可をもらわなくては今住んでいる県境を越えることが出来ない。それを知らないマヤちゃんは、躊躇する彼を説得して県境を越えて遊びに行く。また彼がモデルにスカウトされたと、素直に喜び友だちに言いふらしたりしている。移動の自由がないことをはっきり説明できないハヤト君は、彼女を避けていく。マヤちゃんは後に規制がさまざまにあることを彼の担当弁護士から聞くことになる。

◆会場の感想・質問から

〈1〉ドラマに「ご主人のフルネームを……」と聞かれる裁判シーンがあり、ドキッとしたが…… 

指宿: あれは実際に「アルアル」なんですと。スリランカ人の名前は長くてなかなか覚えられない。だからニックネームで呼び合う。それが「偽装結婚」では?と突くきっかけになる。現場経験から出てくるセリフです。

〈2〉裁判でどれくらい勝つのか?

指宿:入管の裁量権がとても大きく勝訴するのは大変。50件ほどかかわって4%の勝率だが、それでもかなり高い方である。

〈3〉小説では、マヤちゃんがこれから生まれ説明するスタイルになっているが?

中島:内容がとても難しかったので、マヤちゃんが誰かに説明する形しかなかった。

◆5ミニッツ ジョニーH

スリランカの誰でもが唄える童謡「金色の蝶」を原語と日本語訳と替え歌で。

◆お知らせ うしろとワカメ

今回の冒頭と終わりの「お知らせ」コーナーは、後呂良子さんと新スタッフの大場ひろみさん(ワカメ)が担当した。

*次回レイバーネットTVは9月27日(水)「尾澤孝司裁判判決」19時半


●188号(2023/7/12)放送 : 「働く」を真正面から問い直す〜「おんなたちのメーデー前夜祭」から

「女革連」ここにあり!〜ジェンダー問題第二弾!レイバーネットTV速報

 7月12日のレイバーネットTVはジェンダー問題第二弾として<「働く」を真正面から問い直す〜「おんなたちのメーデー前夜祭」から>を放送した。司会は松元ちえさんで、出演は中島由美子さん(全国一般労働組合東京南部委員長)、吉永磨美さん(新聞労連前委員長)、石上さやかさん(首都圏青年ユニオン専従)の三人だった。まず、どぎもを抜かれたのは、石上さんの出で立ちだった(写真)。「女革連」と書かれた青いヘルメットと作業服姿の石上さん。「これで歩いていたら通報されそうになった」そうだ。会の正式名称は「女性を差別と抑圧と搾取から解放する全国変革連合」で、まだ会員は一人。でもそんな石上さんが、職場で体験した差別の実態や「女革連」に至った思いのたけを吐き出して、番組は大いに盛り上がった。

 出演者は、4月30日に開催された「おんなたちのメーデー前夜祭」を成功させた実行委員の人たち。「8時間メーデーとか言われているが、女性は会社+家庭で、1日12時間以上も働いている。33か国中最も睡眠時間が短いのは日本の女性で、ケア労働を押しつけられている。おかしすぎる。ジェンダー平等指数116位の日本の女性たちの声を発信したい」。そんな実態が次々に語られて、止まらない。共通して言われたのは、「差別構造」と意識がすっかり内面化されてしまっていることだ。「それを変えるには小さなことでも声を上げることから」。そんな番組になった。ぜひアーカイブを広げてほしい。(M)

 以下、番組に寄せられた声。

「とても楽しい放送、ありがとうございました。来年はメーデー前夜祭に参加してみたいです。女革連!楽しそうです。労働組合は家父長制! 跡目は長男に! あ〜何か雰囲気わかる〜。何で男性ってあんなに男性が好きなのかと思う時あります。微笑ましい友情の時もありますが、ホモソーシャルだなぁと思う時もあります」(Zさん)

詳細報告 : 玄関にも行けない女と下駄を履いていることに気づかない男たち

「125」と聞いてピンときますか?どんどん下がるジェンダーギャップ指数。146ヶ国中1

25位です。日本が低くなったというより、他国が上がったからとか。男の人はこのままが

いいと思っているかもしれません。女性に対して威張れるし、出世も早く、給料も高いし

……。さて、ジェンダーの2回目。今回も女性からの意義申し立ては続く。しかも「これ

って変じゃない」を書き出してみると、それがなくなれば、男性だって暮らしやすいので

は? 話の内容はシビアでも、最初から最後まで笑いの絶えないスタジオでした!(報告:笠原眞弓)

企画責任:笠原真弓

●司会=松元ちえ

出席者=・石上さやか(首都圏青年ユニオン専従) 

・中島由美子(全国一般労働組合東京南部委員長)

・吉永磨美(新聞労連前委員長)

◆女たちの前夜祭の実践報告から始まる

・「女性を差別と抑圧と搾取から解放する全国変革連合」略して「女革連」とは(石上さ

やか)

石上さんの青いヘルメットに青い作業服が話題に。この格好で「女たちのメーデー前夜祭

」に参加し、通報されそうになった経緯があると笑う。

きっかけは2つの革新的な団体「中ピ連(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解

放連合)」と「女性を泣き寝入りさせない会」に感じるものがあったこと。

ヘルメットの意味は、女性はいまだに頭を守らないと生きていけない状況ではないかとい

うことから。作業着は労働者という意味も含むという。現在メンバー募集中。

・「デトックス」から生まれた「女たちのメーデー」開催の経緯(中島由美子)

男社会で活動していると毒が回るので、ときどきデトックスをする。ある時その席で、OD

CA参加国中日本の女性が最も睡眠時間が短い(2021年調査)と報道されたことが実感だと

話題になった。日本が行った調査もあり、男女を比べても女性の方が睡眠時間は少ない。

1886年に労働者が8時間労働8時間睡眠を求めて立ち上がったのがメーデーなのに、日本は

いまだに8時間労働も確保していない……と愕然とした。ここで、毒を吐くだけで終わり

にしてはいけないと行動を起こした。既存のメーデーは女性たちのためになっているのか

など、メーデー以前と言う意味も込めてメーデー前夜祭をしようと呼び掛ける。

・内容は?(吉永磨美)

3つのプログラムを用意。

1つ目は「言いたいことを言う(スピークアウト)」。

やってよかったと思ったのは、いったん仕事をやめて家庭に入ったけれど、前夜祭に来て、

家事労働も労働であり、自分も社会と繋がって、声を上げていいと思ったという発言が

あったことなど。

2つ目は、「自縛の鎧⇒男らしさとは、女らしさとは」を自覚する取り組み 

「女らしさ」「男らしさ」などと書いた札を付けた合羽を着て、それぞれの「らしさ」を

書いた紙を張っていき、最後に合羽ごと脱ぎ捨てるパーフォ―マンスで縛られているもの

の重さを実感した。

3つ目は小さなことでも、苦しんでいることを少人数で話し合う

それらを通して、集まって安心して話す場があること、様々なアイディアが出てきたこと

など、次につながるメーデーだったのではないかと。

・女たちのメーデー前夜祭に実行委員として参加してどうだったか?

石上さやかさんは

文句を言っている会ではなく、社会と分断されている孤立感がなく、男性のもつ女のイメ

ージが汚されていく感覚がなく、自分が汚されていく感覚が、ここに参加することで取り

除かれていった。そして、自発的に、完全協力性というものを感じたという。

・男性にも共感を得て

問題が起きると男性の場合、指揮命令のどこに問題があったかを追求しはじめるが、女性

たちはサッササと誰かが来て問題を解決する。心地いい集まりだったと口をそろえる。

この会には、男性も参加している。特に若い男性が「居心地がよかった」と。次回は友だ

ちを誘ってくると言ったが、上から抑圧されている若い男性自身もそんな雰囲気に共感し

たのだと思うという。

吉永 笑いが絶えず、自発的に進めていけた。居心地よさの裏には何があるのか? お互

いへのリスペクト、つまり尊敬し、敬意を表し、お互いを尊重しあっていたからではない

か。

「私は認められている」から話せるし「認め合っている」から、広がってきたのではない

か。

完全協力性があると、いい方向に変わっていく。

◆女性の「働く」とはどういうことか

自営業で仕事はしているけれど、会社で働いたことのない人、子どもが生まれてから今ま

で専業主婦だった人。子育て中など「働く」と言ってもバリエーションがたくさんある。

無賃の「働く」のバリエーションも無数にあることも見てきた。特に女性が家などで、無

償で働く種類のもの、例えば介護など、人の世話をする労働は仕事としても非常に安い。

中島さんは、非正規公務員として学生時代に働いていたころは、非正規の人は職員の妻が

多かった。いまだにその感覚で、非正規の人を使っていて、2020年に3割の女性管理職な

んて夢のまた夢。125位ですからと。

例えばと言葉を継ぐ「コピー機が、紙がないとピーピーいっている。近くの男性は動かず、

遠くから女性が走ってきて紙を補給する。私の職場にある」と。そういうことからも女

性の賃金がなぜ低いか、考えてほしいという。

・女性たち家庭内での見えない労働(シャドーワーク)を見直す(石上)

シャドーワークだけでなく、会社としての本幹の仕事以外の補助的仕事に女性たちが多く

働いている。そのことも再評価するべきではないか。

・一般企業の事務職で働いてきた石上さんは、入社面接で営業はどうかと言われた。セク

ハラが嫌だったので、何しろ事務職に就きたかた。ところがその実態は!自分の仕事が忙

しいときに、営業がお客にお茶を出せと。上司にできないというと、女性が入れた方が…

…でしょうと。でも廃止させた。ところが非正規+女が言うと、生意気だといわれた。今

は労働組合の専従だから。労働組合だからそこは……ちゃんとしているのですよネと、中

島さん、吉永さんに念を押す。

・その言葉を受けて吉永さんは続ける。

イヤ、ちゃんとしてない。男中心であることは変わらない。例えば、女友達に組合であっ

たことを話すと「(あなたが)男の委員長でも言われたかな」と指摘されて、初めて言わ

れたことの理不尽さに気づくことが度々あったとか。

求められているものに自分をはめていく。真の意味で、自分で選択しているのかと振り返

ったことも。例えば、新聞社でも子どもを産んだら生活報道部に配転されがちで、子ども

産んでも頭の中は変わらないのに、なんとなく自分自身もそっちに行くような感じがあっ

た。

労働組合も会社と同じ人たちで構成されているので、構造は同じ。こういう話をもっと昼

間から大きな声で話し合いたい(夜の「デトックス」ではなくて言う意味か?)。

・「ホモソの掟と作法/労組は家父長」中島さん

他の労組とのお付き合いなど、いろいろあるが、自分だけ女だと情報が来ないこともある。

それを「ホモソ(ホモソーシャル)の掟と作法」という。男性たちが集まってその人た

ちにしかわからない話をする。

「労組は家父長」とは、次の執行部を決めるときに、オープンな場ではないところで「次

はオマエな」と。つまり「長男」を指名していく。女性委員長の次は必ず男性なのだそう

だ。

吉永さんは続けて、この2つのことは、職種も会社も違っても共通していると強調。それ

ではいけなくて、様々な価値観を持った人でやり取りできる場に、自覚してやっていかな

ければならないと。

・来年もメーデー前夜祭を4月28日に予定している

「前夜祭」を取ってメーデーにしたいのだが、今はまだ「前夜祭」である。

石上さんは人生ゲームと、かるたを作りたいという。市販されている人生ゲームは男性の

ものだが、女性の生きづらさに焦点を合わせたものを作ろうと。そこには低賃金とか、DV

夫、出産、育児、家事、介護などが入って来る予定だ。

ところで、ロスゼネ世代の石上さんが自分の持っている男性社会で感じる違和感を言語化

できたのは、上野千鶴子さんの著書がきっかけという。そこから、「一人の違和感」から

「社会の違和感」に広がり、「女革連」になったという。

◆最後の一言

・吉永さん⇒「外に出られない女たち」下駄履き問題が言われるが、女性は玄関にも行け

ていないのではないかと思っている。女性は未だ選択肢そのものが得られていないのでは

ないかと思う。

・中島⇒労働争議の現場で、「ガンバルゾー」はいいのだが、その前に汚い怒声が行き交

う。ある時初めて参加した女性に「コワイ」と言われた。訊くと、DVを受けていてあの声、

調子で罵倒されるからと。びっくりした。勇ましいだけではだめだと、それ以降「ッザ

ケンジャネーよ」はやめました(笑)と。

・石上さん⇒女性の問題だけど、まさにマジョリティーである男性の問題でもある。そこ

から変えていかなければならないと、若い女性を狙った小田急線刺傷事件の例を挙げる。

犯人は若い女性があらゆる面で優遇されていると。でもこの人は、自分が下駄をはかされ

ていることに気づいていない。

続けて、これまでメーデーに関心のなかった人が準備に参加して、大きな波を起こしてい

き、当日になる。それがメーデー。そういう流れを作りたいと思う。

●5ミニッツ:

詩の朗読 門岡瞳 「かたまるけど、また伸ばしてみるのだ」(葵マコの日記)から(葵

マコは妖艶に踊るだけでなく、女の人生の『生と性』を繊細に表現する現役ストリッパー)

伴奏 ジョニーH


●187号(2023/6/28)放送 : どうする? どうなる? 今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る

深堀してはいけないリニア新幹線問題―いのち・経済大打撃・出来ません・要りません―

 

今回は放送直前に大鹿村のリニア新幹線の工事現場に行きました。案内してくださったの

は現地に移住してまで反対運動をしている登山家でもある宗像充さん(フリーライター)。

的確に問題個所を案内していただきながら、リアルに観ることの大事さを、改めて思っ

たのでした。2027年完成なんてあり得ません。山を壊し、川を壊し、里を壊し、海を壊し

、命も奪い、人々は何をしたいのでしょうか?

187号は、どの工区も大幅遅れで、2027年に完成は無理ということだった。他国では計画

段階で反対されたり、途中で頓挫しています。日本もこれ以上傷を深めることなく、撤退

してほしいです。

静岡県の工区には「破砕帯」があるといいます。石原裕次郎の映画「黒部の太陽」は黒部

ダムの難工事の映画でした。トンネル工事と聞くたびに、あの恐怖を思い出します。英雄

譚ではありません。リニアと同じ発想です。

報告:笠原眞弓

アーカイブアドレス:https://www.youtube.com/watch?v=IontEBBOnvY

企画:司会 黒鉄好

●出席者

 樫田秀樹(ジャーナリスト/「悪夢の超特急 リニア中央新幹線」著者)

 天野捷一(リニア新幹線沿線住民ネットワーク)

 黒鉄好(安全問題研究会)

◆いまリニアはどうなっている 知られていない現状   樫田秀樹さん 0:03:00

問題は

●報道のずさんさ(裏取りしない)/工事前段階からの大幅遅れ/各県の担当者の無責任

(自ら調べない)

●具体的な問題は

・リニア問題を取材する記者がほとんどいないため、不正確な報道が広がる

・例えば、工事の遅れは、静岡県だけの責任⇒実は静岡県は他より早いくらいなのに誤認

されているのは、川勝静岡県知事とJR東海と2020年に会談した翌日の報道が原因

・知事が他の工区の遅れを糺したにもかかわらず、JR側は意識的にか、答えなかった

・記者は他県の状況を取材していないため、翌日の新聞は、静岡県の工事遅れのみが報道

された

・神奈川県の担当者は、何も聞いていないと。自分で調べればわかることなのに

・各静岡より遅れている県知事の無自覚(神奈川県、愛知県、山梨県)

●実際の各工区による工期の遅れのトップ10は(2020年調べ)

 1位 遅れ8年  神奈川県リニア神奈川県駅

 2位   7年

   神奈川県リニア車両基地/岐阜県久々利トンネル/第二大井トンネル

 5位  6年  岐阜県第一大井トンネル/長野県生越工区

 7位  5年山梨県リニア山梨駅

 8位  3年9カ月以上 愛知県名城非常口

 9位  3年半以上 長野県坂島工区

 10位  3年5カ月 長野県釜沢非常口

以上で見られるように、工事の遅れは静岡だけのせいではない

●川勝知事の立ち位置

・川勝知事は、リニア推進の立場。だが、やるなら「静岡県の水を守ってね」ということ

・さらに彼は、遅れに遅れている神奈川県の車両基地などを視察して、他区間の進捗状況

を確認している

・静岡県の工区は破砕帯があって水が川のように流れる場所で、工事の人の命も危険

●工区の引き受け手が決まっていないところがある

着工どころか、工事を請け負う企業が決まっていない工区もある

その理由

・採算が取れないと危険である⇒ 難工事であること樫田。プラス、破砕帯に行く手を阻

まれて人命すら保証できないと、トンネル掘りのベテラン企業が引き受けない。

・すでに犠牲者を出している工区が何カ所もある

●工事が完成したからと言って、すぐに開業できない

磁気の調整など、安全運転のための走行テストに2年を要する。つまり2027年開業なら202

5年までに全工区の工事の完成が必須だが……

◆ストップ・リニア訴訟  天野捷一さん

●2016年5月20日にリニア工事の認可取消しの行政訴訟を起こす

・事前に国を相手の行政訴訟か、JR東海を相手取る民事訴訟か、1年をかけて研究し、工

事認可の取り消しを求める行政訴訟に踏み切る

・2020年12月に裁判長による原告の3分の2(700人以上)を原告不適格とする中間判決が

出る(不当に原告の資格を沿線住民に限った)

・国策事業で、9兆円の巨額の予算をかける事業に、国民すべてが意見を言う権利がある

という立場で裁判を続ける

・その後裁判官が交代し、こちらが要請していた山梨実験線の現地視察が実現(2022/12)

・事件がないと報道されない。初めての死亡事故のニュースを流す

◆東京ドーム50杯分の残土はどこへ0:37:10

●長野県の現場大鹿村の残土 

・反対運動をしておられる宗像充さんの案内で、リニア建設現場動画の上映(レイバーネット撮影・編集)

・大鹿村の景色と天龍川河岸の崖崩れや本流脇に積み上げられるトンネル残土。仮置き場

と言われているが、いつ最終置き場になるか、目を離せない状態

・ヒ素などの有害重金属を含む残土の再利用実験など(セメントと混ぜるなど)の現場も

あった

●北海道新幹線延伸も残土とヒ素問題が   黒鉄好さん

・北海道新幹線問題に言及。ヒ素含有の残土置き場など、問題は全く同じ

・小樽でも残土がおかれ始めたが、住民運動で住宅から少し離れたところに移せた

・2030年札幌オリンピック(誘致予定)時に開業希望だが……、間に合わないだろう。両

方の頓挫を願う

●リニア建設で現在大きな問題は残土処理  天野さん

・JR東海としては、1谷に埋める 2愛知ではケイ酸の採掘跡の穴埋め 3神奈川では海岸

の埋め立てに 4河川敷に積み上げる などを考えているが、80%決まっていると言うが

、4割弱しか決まっていない(樫田さん調べ)

・これらの処理により費用、景観、環境破壊、現在埋め立ての需要はないので、強行の影

響は大きい

◆原発に似ている問題 最後はゴミ 汚染水の海洋投棄と残土置き場

・国家事業(省庁の発注事業)なら最初に残土置き場を決めなければならないが「国策で

ありながら民間事業」なので、適用されない

・各段階での事業説明会で、残土処理方法の回答を先延ばしにしてきた結果、ここにきて

反対運動が起き、白紙になったところも

・(1つの事例)相模原市の元採石場。閉山寸前だったが高さ60mところから1.3万m3

を新たに採石するために、その100倍のリニア残土を急斜面に盛土する。その目的は何か

。近くに非常口トンネルの予定地がある

・(合わせて考えたい)残土置き場は、2年間の管理が義務付けられているが、3年目か

らは義務がないので、どうなっても責任を負わない

◆質問コーナー そこまでしてもやりたいのはなぜ?(「技術」輸出も有りか)

 ・2013年の当時の山田社長が記者会見で「リニアはペイしない」と発言。国交省に糺す

と「その通り」と言い、鉄道は採算性で考えるものではないと。では、全国の不採算路線

の廃線はどう考えればいいのか?

 ・輸出を視野に入れている?

 ・不採算でも進めるということは、国がお金を出すということでは

 ・活発な質問アリ 事故が起きたら/電源は原発の電気?/超電導技術は/

◆最後に言い残したこと

・樫田さん 社長は、リニアはペイしないと言ったが、J

R東海がペイしないのでは?

この間のリモートワークでリニアの乗客の2割減//2045年には人口が25%減/JR東海

の国からの借金は3兆円。返済は(年間3千億円)2046年頃から始まる/この度の戦争

による建設資材の値上げが考えられる

・天野さん 工事工程を作り直すべきでは。現在の工事工程表には、明確に年号は記載さ

れていない

・完成後の走行実験も山梨の実験場で十分やっているから大丈夫というが、5、6両の車

両編成での実験ではやったことにならない

・黒鉄さん 聞けば聞くほど不安材料ばかり。国営になるのがいいと思うから、納税者が

この国策民営をやめさせることが必要。そのためには、政治の転換が必要では

◆「ジョニーと乱の5ミニッツ」

 川柳 無理無謀リニアやがて宙に浮き  乱鬼龍

    天龍川残土の重みじっと耐え  白眞弓

 ジョニーHの替え歌  「俺の列車」 作詞作曲 口唐辛子文句郎(ジョニーH)

次回は7月12日(水) ジェンダー2です

●企画者・黒鉄さんの感想
http://www.labornetjp.org/news/2023/0628kuro
●JRの運転士をしている関さんの感想
http://www.labornetjp.org/news/2023/0628kanso

●186号(2023/6/12)放送 : これでいいのか着々進む大軍拡!〜杉原浩司さんを囲んで一緒に考える

ズルズルと「戦争する国」にさせてはならない!〜レイバーネットTVで熱いディスカッション

  6月14日のレイバーネットTVは、「これでいいのか着々進む大軍拡!〜杉原浩司さんを囲んで一緒に考える」を放送しました。出演者は6人、それにギャラリー参加も多数あり、小さなスタジオはいっぱいになりました。

 岸田政権下の通常国会は悪法の連続で、数の力で押し通してきました。入管法では反対の声が高まりましたが、軍拡や戦争に反対する運動は低迷したままでした。それは何故なのか、どうしたらいいのか。議論沸騰で、かなりおもしろくて、考えせられるディスカッションになりました。

 「いま大軍拡政策が進んでいるが、それは明文改憲よりこわい」と杉原浩司さん(写真上)は強調しました。「明文改憲なら国会の発議、国民投票など国民が関与することができる。しかし今のやり方はそれをスルーして、事実上の改憲が行われている。大変な事態だ」と。また野党第一党の立憲が問題であることも、はっきり指摘しました。「立憲は南西諸島の自衛隊基地建設を認めてきたし、今回の軍需産業強化法も賛成してしまった。これでは市民と野党の大きな運動がつくれない。市民運動側は独立性をもって、おかしいときはきちんと批判すべきだ。立憲のなかにも、軍需産業強化法反対で頑張った人もいる。だからこそ、批判するところは批判してつながっていくことではないか。そうでないとこのままズルズルいってしまう」。

 植松青児さんは「いまの大軍拡は日本を守るためのものではない。アメリカの覇権を守るためのものだ。このことをしっかり押さえないとヤバイ。メディアの報道に流されてしまう」と、反対運動の基本認識の大事さを強調しました。

 現場で頑張っている人からも発言が続きました。雷門で「軍拡、入管法」のプラカードを掲げてスタンディングをしている人は、「通行人はほとんどが無関心で避けてとおる。反応するのは外国人ばかり」と嘆く。ではどうしたらいいのか、なにが問題なのか、熱いやりとりがありました。戦争体験者がいなくなり、身近に考えられなくなっている時代だからこそ、さまざまな工夫が必要ではないか。たとえば、沖縄の人たちの話を直接聞くこと、映画というメディアを通して一緒に考えることなどが出されました。

 ズルズルと「戦争する国」にさせてはならない。参加者の危機感は強く、今後の運動に向けた示唆に富んだディスカッション番組になりました。アーカイブをご活用ください。(M)

 

●笠原真弓の詳細報告はこちら http://www.labornetjp.org/news/2023/0614hokoku2


●185号(2023/5/31)放送 : 新しい戦前にさせない!〜反戦川柳人・鶴彬と現在


報告:社会運動の中でいま必要なのは「言葉の力」

<新しい戦前にさせない!反戦川柳人・鶴彬と現在〜佐高信さんを囲んで>

レイバーネットTV185号(5/31)報告

佐高さんの著書『反戦川柳人 鶴彬の獄死(集英社新書)』が刊行された。鶴彬と、その周りの文化人たちが、あの日中戦争時代をどう生き、どう発信していたのかを様々な人とのやり取りや論評を通して浮き上がらせるものだった。

つい最近の句会では「鶴彬おれの出番がまた来たか」(一志)という句を目にして、背筋が寒くなった。リアリティーあり過ぎである。

ただし、あまり視聴率は伸びないと思っていたのに、リアル視聴が200を超え、1日後には500、3日後には1200を超えたことに、世界が戦争へ向かう危機を、憂いをもって考えさせられた。(報告:笠原眞弓)

・アーカイブアドレス:https://youtu.be/Qy-LXC5JvdI 

・今回の企画担当=レイバーネット川柳班 乱鬼龍

・司会 :川柳班 乱鬼龍・白眞弓

・出席者:佐高信(著者・共同テーブル代表)/川柳班から発言:笑い茸・八金・かぼす

・為子

◆執筆のきっかけは?

高校の教師をしていた20代の頃、鶴彬の作品に出合ったので50年以上、一叩人編の鶴彬全

集や澤地久枝さんの加筆版にも触れて、鶴彬を広める努力をしてきた。

高浜虚子のことを書くつもりだったが、書き始めたころ『女帝小池百合子』を描いた石井

妙子さんに、鶴彬について問われ、急遽書くことにしたと。出版直後の「大波小波(東京

新聞)」の評は、前川喜平さんに「自分で書いたのでは」と言われたくらい納得いくもの

だったとか。

幸いにして初版後すぐに再販がかかるという状態で、鶴彬の訴求力、インパクトが想像す

る以上に大きいと思ったという。

◆鶴彬は言葉のスナイパー 

・屍のゐないニュース映画で勇ましい 鶴彬

今まさに、ウクライナのニュースでも屍が映らない。実感のないところで戦争が語られて

いる状態だと指摘。鶴彬は父親と同い歳で、ここに起きていることは自分にとって、遠い

過去のことではないと。

佐高さんは、例え少数派でもスナイパーのように、言葉の力でひっくり返していくことの

大切さを力説する。鶴彬が29歳で殺されたのは、権力側が彼を恐れた。運動する側は「言

葉」という文化にあまり関心がないが、例えば渡辺白泉の「戦争が廊下の奥に立ってゐた

」の俳句のように、社会運動も文化つまり「言葉」の力で鋭くひっくり返していくことが

大切だと力説した。

◆川柳班の課題 反戦句の中から佐高さん選

・ゼレンスキー武器下さいと広島詣で  (八金)

・ゼレンスキーつかい軍拡コマーシャル (笑い茸)

笑い茸さんは、戦争は殺し合いだが、今のこの戦争が軍拡をする(武器の売り上げを伸ば

す)ことに利用されているかを表したかったという。

佐高さんは、今回の広島サミットが成功だったという世間の風潮の中で、核禁止条約に参

加もしていない日本が、核を認めるようなものにしてしまったと鋭く突く。

続けて佐高さんがいい句だと紹介したのは、以下の2句。

・戦争が選挙するたび近くなり  (乱鬼龍)

・広島に核のボタンを置いて行け  (一志)

乱鬼龍――自分の句は、選挙のたびに参政党や維新がどんどん伸びて、右傾化していく中

で我々の575も権力を打つスナイパーになっているか?もっと磨く努力をしなければなら

ないということを表現。 

◆本を読みこむ

・白眞弓――最後の4ページ「おわりに」に、全てが凝縮していると思う。鶴彬が、川柳

とは何かと、15分の演説をしてプロレタリアリアリズムの日本における典型は川柳である

と述べる場面がある。佐高さんはその中の「川柳屋のくせに反戦なんて叫ぶのか」と蔑ま

れていることを取り上げている。

・佐高さんは、言う。29歳の凝縮された生涯の中で論戦をしていくが、花鳥風月に閉じこ

もる俳句と違って社会性を持たなければならない。川柳は和歌や俳句より下に見られてい

るが、逆にそれは勲章だと激しく言う。それは今も続き、非政治性が一番政治的と言える

かもしれないと。

・一志—―歌は軍人の号令より強いとか、真に批判するには芸術的でなければならないと

あるが、それが我々には弱い。古式川柳でもスローガン的なものでも、相手に響かない。

鶴彬の句が今に残っているのは、芸術性の高さにある。また天皇批判がバシッとあるのも

胆だ。この本にはそういうことが書いてあって、読み終えて思わず「good

job」と佐高さんに伝えてしまったと言う。

・八金――この本の特徴は、川柳と俳句の違いを明確にしていること。それは初心者にと

ってもインパクトが強いと思った。思わず笑ったのは、「質問があります事件」。続けて

「殴らない同盟」を作ったそのおかしみ、軽妙なタッチなどに新たな視点が生まれたとい

う。

・かぼす――タイムリーの本だと思う。出版と同時に増刷が決まったというのもうなずけ

る。満州事変の時に召集されて軍隊内で.反戦活動をして拘束され、日中戦争の時に獄中

で殺された。

かぼすさんの句の紹介があった。

  ・花畑有事になれば芋畑  (かぼす)

5月11日の朝日新聞に、有事になれば花畑を食料生産の畑や田んぼに転換するという法律

の作成に入ったとあった。以前に川柳班で行ったフィールドワークで館山へ行ったとき、

戦中に畑にも畔にも花を植えると懲役3年の法律を作った。その監視に翼賛少年団が当た

ったと聞いたことを思い出しての句。大本営などのあった千葉と長野で厳しかった。小説

や映画になっている。

佐高さんはその話を受けて、この句は具体的に分かる。それは大事なこと。ある集会で「

自民党に天罰を!公明党に仏罰を!」という幟旗があって、私は続けて「そして維新に神

罰を!」(笑)とした。鶴彬は具体的で、観念ではないと続ける。

1958年にあって勝利した警察官職務執行法裁判で募集したスローガンが「デートも出来な

い警職法」というもので、非常に具体的に目に見える。こういうのが運動に力を与えてい

くという。

大学の先生などで、「天皇に期待する」とか「天皇にバシッと言ってもらう」ということ

を言う人もいる。ナニ言ってんの!であると!!

・為子—―ジャンルを超えて琴線に刺さって来る。肉体で向かってくる。すごいなぁと思

った。今出会ってよかった。川柳もスナイパーみたいな人がいても、もっと緩い人がいて

もいいし、国を変えていくにはいろんな形で発信していかなければならないと思った。

・笑い茸――古関裕而の露営の歌「勝ってくるぞと勇ましく…」が流行っているころ、川

柳人が弾圧され、鶴は殺された。それとびっくりしたのは、井上信子が鶴彬の死を確認し

ての帰りに、日常生活に戻ること。ビールを飲んで松茸のフライを食べて、映画を観てい

る。それを読んで、今と同じだなァと。また今NHKが古関裕而の朝ドラを放映していて、

そこにこの本をぶつけてきた。うれしいと思った。(ここで佐高さんは古関裕而の作品、

姿勢など話題にする)

◆鶴彬の川柳を中国語に訳す

・奥徒(本人は欠席)—―中国語をたしなむ奥徒さんは、鶴彬が日中戦争時に発表した反

戦句がもとで死んでいったので、その中の2句と見返しを中国語に訳した。中国での川柳

の普及度は不明だが、同じ漢詩から変化していった川柳も理解してもらえるのではないか

という。この本の中国語訳をしてもらえないかということだった。

2句を上げる

万岁上战场 高高得举起双手 扔下大陆里

万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た

打掉下手脚 就像成为圆木头 遣送回国了

手と足をもいだ丸太にしてかへし

佐高さんは、加藤陽子さんとの対談『戦争と日本人』という本の中で加藤さんが鶴彬の川

柳を話題にしていて、それが中国語に訳されているという。(『战争与日本人』

2017/9/30中国語版[日]加藤阳子 佐高信(著))

◆鶴彬の天性のユーモアと優しさ

 ・暴風と海との恋を見ましたか

 ・蟻食いを噛み殺したまま死んだ蟻

蟻が蟻食いをかみ殺すことはないのに、それがあるように書いている。

乱鬼龍も「暴風と海との恋を見ましたか」は、すごい句、名句だと絶賛する。

白眞弓も鶴彬の初期の作品の「優しさ」に感動したといい、

・皴に宿る淋しい影よ母よにみる句が、女工哀史のような句につながっていくと思うと。

佐高さんは、落書きを集めた本があるが、下品とか下賤と言われるものの中からエネルギ

ーが出て来ることもあると。便所の中の落書きで、学問の難しいものが並んでいる中に「

今は黙ってクソをしろ」というのがあったり(笑)。ロマンティストと言えば、革命が一

番ロマンチックともいえるのでは。佐高さんは最近、柳広司(小説『アンブレイカブル』

著者)さんと対談をしていて、国家に殺された人を小説化している。例えば、大逆事件の

『太平洋食堂』とか。鶴彬にも触れている。(柳さんとの対談のURL https://shinsho-p

lus.shueisha.co.jp/interview/sataka_yanagi/22832 )

城山三郎さんと話をしていて、彼は17歳で海軍に志願しているが、それは志願ではなかっ

た。国家や社会がカッコつきで強制したのだという。その時に古関裕而の話が出て、体を

震わせておこった。古関裕而は間違っての招集ということで、1か月で除隊になっている。

◆「今・ここ・私」を書くのが川柳(ギャラリーから)

鶴彬を取り上げてくださってありがとうございましたと話しはじめたのは高鶴礼子さん(

川柳人・鶴彬研究者)。

・高鶴礼子――川柳は「今・ここ・私」を書くこと。私の今は何か、私のここ、現在地は

どこなのか。私はそれに対してどう思うか。鶴彬は、それを実践した。彼の持っていた詩

人としての感性をもとに、彼の生きた今、彼のいたここ、彼の中の私を書いた。机の上で

こしらえた事ではない。鶴の目が見て、頭で感じ、心で受け止めたものを「言葉」にした

。それによって殺された。この本は、平坦に彼の人生を書くのではなく、様々な角度から

あぶりだしている。そこが素敵だなと思う。今この時期に鶴彬を書いてくださったこと、

とてもうれしい。鶴彬の全句集をガリ版で出版した一叩人、それを印刷して出版したたい

まつ社の大野晋は喜んでいるだろうと言う。

◆「新しい戦前にさせない!」のタイトルその他について

今日のTVのタイトル「新しい戦前にさせない!」は、佐高さんしている活動の「共同テー

ブル」と同じタイトルだが、それについての思いは?という質問に対して、佐高さんは答

える。

憲法番外地になっている状況で、改憲ではなくて「壊憲」になっている。改憲を言う人は

、統一教会に汚染されていると思っていい。今後は、憲法を軸にした闘いになるだろう。

革新的なことを言う人の中にも、憲法を改めた方がいいと言う人がいる。それはだめです

よ。城山さんが、「戦争はすべてのものを失わせる。戦争で得たものは憲法だけだ」と言

い切っていた。

中村哲か岸田晋三(岸田首相は安倍晋三との合成)だと言い切る。

軍拡の岸田を選ぶか、砂漠の緑化か。軍では命はまもれないということだ。

その後も軍法会議での鶴の受け答え、天皇制と剣花坊のことなど、様々な話が続く充実し

た時間だった。

また、「共同テーブル(代表:佐高信)」で川柳を募集しないかと提案があった。

◆ジョニーHの5ミニッツコーナー

替え歌は、東雲節に乗せて「鶴彬川柳節」

次回レイバーネットTVは6月14日の予定。テーマは未定。告知にご注意を

今後の佐高信さんの講演会2つ

◎7月16日(日)13時30分~4時30分  

「鶴彬心の軌跡」映画上映と佐高信氏記念公演 文京シビックセンター4Fホール

◎9月3日(日)佐高信氏講演 かほく市(詳細未定)


●184号(2023/5/21)放送 : G7広島サミット徹底批判じゃけ!


速報:「被爆地広島が利用された」〜広島とつないでサミット批判

 

 放送スタジオは、「ノーG7!ノーG7」の鍋タタキコールに包まれました。5月21日のレイバーネットTV(184号)は、「G7広島サミット徹底批判じゃけ!」と題して、終わったばかりの広島サミットを取り上げました。出演者は、池田五律、稲垣豊、小倉利丸、京極紀子、岡原美知子(広島からオンライン出演)の各氏でした。「ゼレンスキーはだれに会いにきたのか?」など、知られざるサミットの真相に迫る内容が満載でした。

 広島からオンラインで参加した岡原美知子さん(写真)は、広島の実態と人々の思いを語りました。「警備でバス電車は止まるなど、街はすごく不便になりました。なにより被爆地広島が利用されたと思っています。核廃絶、核禁止条約にはまったく触れられず、中露の核について批判はしても、保有国アメリカ・フランス・イギリスについては言及なし。ある被爆団体の人は19日が雨だったので、“涙雨”と言っていました。それが広島の思いです。資料館を訪問したバイデン大統領は、『これは資料館の物語だ』と言いました。以前オバマは『空から死が降ってきた』と語りましたが、原爆投下の当事者であるアメリカ政府の無責任ぶりが際だちました。広島は本当に怒っています」。(レイバーネットTVプロジェクト)


報告:徹底して被爆都市広島をバカにしたG7の国々

 岸田首相が下準備であちこち飛び回って、5月19日にはじまった広島サミットは、21日に終わった。その日の18時に私たちのレイバーネットTV184号が始まった。なんだか最後はゼレンスキーに場を奪われた印象だったがどんな集まりだったのか振り返ってみた。

 スタジオには「G7広島サミットを問う市民のつどい」を開催した呼びかけ人が集まって、まず鍋叩きから始まった。これはフランスの”よそものネット”から、「G7の3人(米英仏)が核のボタンをもって広島平和記念資料館に入る時に、鍋叩き(ヨーロッパや南米などでの伝統的な民衆の抗議行動の一つ)で抗議してほしい」と要望があったからと。(報告:笠原眞弓)

・2023年5月21日(日)18.00一19.10(70分)

・アーカイブアドレス:https://youtu.be/Qy-LXC5JvdI

・企画担当:稲垣豊

・発言者:稲垣豊(司会)、京極紀子、岡原美知子(オンライン)、池田五律、小倉利丸

 <参考>G7広島サミットを問う市民のつどいの宣言文

https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/20230513statement/

◎入管法改悪反対デモの映像

 今回は渋谷国連大学前で行われた入管法改悪反対集会の映像を最初に上映。憲法違反であるこの法案を何とか止めたいと7000人(主催者発表)の人が集まり、集会の後は渋谷までのデモがあり、さらにそこでも同様の集会があった。もちろん全国各地で集会・デモが行われていた。

◎G7広島サミット徹底批判じゃけ!

◆市民のG7への反応は?(京極紀子さん)

 G7の1週間前に広島市民の声を届けようと「G7広島サミットを問う市民のつどい」を開いた。街の中は全国から集められた警官で異様な雰囲気に包まれ、市民たちに迷惑がられていたとか。地元広島をはじめ、沖縄や東京など全国からの発言者の紹介に続いて、次の日の見学会の様子を映像と共に解説した。

 広島の人々は、軍都広島と言うがその通り。驚いたことに、サミット会場は侵略戦争の出撃の拠点となった宇品島に建つプリンスホテル。市民は驚くと同時に政府の真意は何かといぶかしがっているということだ。

 その後の原爆ドーム前での集会、続くデモは200人と小規模ではあったが、アーケード街での「サミット反対」の訴えに共感してもらえたという。

◆軍都広島 加害と被害の歴史を背負ってのサミット(岡原美知子さん)

・1894年(明治27年)日清戦争時に広島城内に大本営がおかれ、天皇が移住したのが軍都広島の始まり

・宇品港は兵士の送り出しを含め、兵站の重要拠点だった

・日中戦争時の加害と被害の碑文のこと

 1970年(昭和55)に建てられた歩兵第11聯隊の碑文には、明治以降大きな戦争のたびにここから出兵していることが刻まれている

・現在の碑文は1994年のアジア競技大会時に、侵略戦争の表現をぼかす改刻をおこなった

・先の日中戦争時にマレー半島で行った華僑の粛清や大久野島(竹原市)が毒ガス製造の島であったこと、ここからたくさんの朝鮮半島出身の女性が戦場に送りだされていたことも刻まれていない

・広島陸軍被服支廠、宇品陸軍糧秣支廠なども軍都であった証しとして残されている

◆サミットは戦時 体制/核軍拡/ゼレンスキーとF16/対中包囲網(池田五律さん)

 広島サミットで思うこととして、4つのことを言う。

1、市内の厳戒警備体制への違和感    ウクライナ戦争下でのサミットが、海上自衛隊と海上保安庁が一体となった新しい国家安全保障戦略に、岩国基地の米軍と連携した戒厳体制、つまり戦時体制で行われたと見ていい。

2、核をめぐる広島ビジョン。

 核軍縮を一向に履行しないロシアへの批判、弾道ミサイル等の制限条約をアメリカが脱退して今の軍拡を生んだという問題を無視して、自らの核軍拡を正当化するものであったこと。

3、ゼレンスキーとバイデンの対面とF16

 ゼレンスキーを呼んで、出席しているG7以外の国にもオルグさせたこと。その中でロシア制裁と、ウクライナへの武器供与の強化、特にアメリカのF16の供与を取り付けたのは、象徴的なもの。

4、対中包囲網形成。中国に対する懸念の強調

 対中包囲網の形成、核に対する広島ビジョンなどが首脳宣言でも強く主張している。中でも中国の東シナ海、南シナ海に対する海洋進出を懸念している。

 今の戦争は戦時になってからのものばかりでなく、経済安保という戦争もある。つまり、中国への過度な依存をやめることを首脳宣言で提言された。

 ウクライナを矢面に立てる形でのロシア弱体化作戦をG7らしく、多くの国を巻き込んでいく意図がよく表れていた。例えば、

・クワッド(日、米、豪、印)の会議も行われた

・日米韓の軍事協力を一気に進める踏み台になった(これは、韓国の被曝者慰霊碑にユン大統領と岸田が一緒に献花するなど、日本の植民地支配の歴史を隠ぺいしたうえでおこなわれた)

・日本・カナダの首脳会議は、今後の多国間安保の時代を告げるものになった

などにみられた。

◆G7は限りなくプロパガンダ……の夢物語(小倉利丸さん)

 G7サミットについては連日報道されていたので、一応のことは理解していると思うが、と話し出す。

・20日ころのニュースでNHKが「サミットの重要な課題を現地から」と放送したのは、首脳たちのおみやげ情報や、サミットついて学校でどんな教育がなされたかという「ヨイショ報道」だった

・一方で、開催までは広島でやるのだから「核軍縮」あるいはそれに近いメッセージを期待する報道があったが、実際には一度も核廃絶は語られなかった

・誰が考えてもあり得ないことをメディアは煽ったことになり、これまでのサミットに比べ、プロパガンダ色の強いサミットだった

 ということは、昨年12月に政府が出したハイブリッド戦(正規の軍事力に、サイバー攻撃やSNSなど新旧の手法を組み合わせた総力戦)に繋がる。その中でも重要なのは、情報戦。しかも偽情報を出すことだと、防衛3文書の中にある

・今回のサミットは、あたかも人権を推進させ、核軍縮をするかのようなポーズを見せつつ、そんなことは一切なかった

・岸田が「核廃絶」と言った場合のターゲットは、ロシア・中国・北朝鮮。彼らが核兵器を破棄したら「我々もチョビットなくそうか」があくまでも基本姿勢

・宣言が出るが、これはあくまでも絵に描いた餅。現実はどうなのか

・自衛隊について、一切語らない平和とは何か?

・つまり今回のサミットは、まさにウクライナ戦の中のプロパガンダ戦争だったと言える

◆利用された「被爆地広島」は怒っている(岡原さん)

 当日の警備体制がすごかった。二重に警備隊が入っていたし、警備のあるところの渋滞がひどかったと話し出し、下記述べた。

・「被爆地広島」が利用されたと強く思う

・「広島ビジョン」「首脳宣言」はあるが、核廃絶や核兵器禁止条約については全く触れられなかった

・「核兵器の無い世界は理想」として、中国をけん制しながらロシアの核はいけないという

・被爆者や市民団体は、核保有国のアメリカ、フランス、イギリスに対しては廃絶・減少とは言わず、理想に近づくために「核を保有しながら、拡大抑止を含め合意した」と受け取り、それを批判して記者会見もした

・今回首脳宣言が最終日の前日に出されるなど、ゼレンスキー、ウクライナサミットであり、彼に振り回された

・資料館で何を観たか、被爆者とどんな話をしたかは公表されず、岸田の芳名録は血も肉もないものだった。バイデンは、「資料館の物語だ」と始まっていて、原爆を落とした責任には全く触れていない

◆G7の続きの司法総会合は中国がターゲットに(池田さん)

 今年のG7サミットは12月まで様々なテーマで.続く。直近では7月7日の司法相会合。

 ASEANの司法相会合と合体させて行う予定。ここでは、法の支配(国際法)と人権が話しあわれるだろうということだ。ロシアに対しての無条件即時撤退とプーチンに対する戦争責任者への処罰がある。もう一つは海洋安全保障。これも中国への圧力。3つ目はウイグル地方のことで、人権という名目でこれも中国がターゲット。

◆歴史の汚点になるサミット(岡原さん)

 平和公園内にある韓国人被爆者の碑を韓国大統領、岸田首相参拝したが、その問題の解決は全て韓国に任せているが、きちんと総括をしたうえでの行動をするべきだった。

 歴史の汚点になるサミットだったと思うときっぱりという。

◆G7は独裁である(小倉さん)

 全てのルールを決めるときは、民主主義でなければならないと考えている。ところがG7は、民主主義とは真逆な組織である。民主主義のプロセスを無視してトップだけが物事を決めていく。よく見ると、連合も入った様々な組織が取り込まれ、みんなの意見という(アウトリーチ)ポーズに使われている。そうではなくて、G7ではダメなんだと言っていくことが必要と強調する。

 ゼレンスキーが日本に来た目的はバイデンに会うこと。その絶好のチャンスだった。これは様々な動きに影響してくるだろう。その中で目的や成果が明らかになってきた。

*休憩タイム「ジョニーと乱の5ミニッツ」

 ○レイバーネットTV川柳コーナー

   サミットの茶番の裏の恐ろしさ  乱鬼龍

   ヒロシマは大迷惑の厳戒玲    なずな

 ○ジョニーHの替え歌コーナー

        今回は広島の輝かしい市民プロ球団カープにちなむ「広島サミットの歌」

 最後に出演者で、そろって鍋叩きをして終わった。

 次回は5月31日(水)19時30分より『反戦川柳人 鶴彬の獄死』を出版したばかりの佐高信さんを囲んで、川柳とは表現とはを自由に話し合う。 


●183号(2023/4/26)放送 : 難民をいじめてどうするの?〜入管法改悪反対運動の現場から


テレビ詳細報告:徹底的に人権を無視する日本の入管庁

これを書いている最中の4月28日、最悪の「入管改悪法」が衆院法務委員会を通過した。廃案一択と叫ばれる中で、修正案協議を自公維民の4党で行ってのことだった。そのニュースを聞きながら、日本って、世界に敵を作っているのよねと改めて認識する。

再び戦争をしないためにと始めた私の初めての社会活動は、主にアジアからの留学生との交流だった。世界に友だちがいれば、戦争は起こせないと。そこで出会った入管問題、そしてベトナム戦争後の国費留学生の難民化問題だった。それゆえ、2年前に続く今回の入管法の改悪には、心を痛めている。

当事者家族として話してくださったナオミさんの一つ一つの言葉に涙が滲んだ。後ろに貼られたフリップの「法が終わるところ 暴政が始まる」に強く共感し、ヒットラーがワイマール憲法を止めたような今の日本の状態に、心底の怒りを感じる。(笠原真弓)  

 

・企画担当 松本浩美

・司会   根岸恵子

・コメント 松本浩美(フリーライター 連日の抗議行動)

・ゲスト  ナオミ (仮放免者スリランカ人の配偶者/在留資格を求めて裁判中)

      小池宏之(支援者・#FREEUSHIKU)

 2021年5月廃案になった入管法改正(悪)法案が、今年4月13日に再び審議入り。内容は 当時とほぼ同じ。しかも2回難民申請すると、3回目から申請中であっても強制送還の対象 となるなど、さらに厳しいものになっている。

 

◆動画は訴える 4月21日の国会前集会の動画

・「私たちは人間だ!」と言わせている現実から目を背けないで!

・今こそ国際情勢に合わせて変えていくべき時

・1本の線引きで、権利が守られない人が出ることはやめよう

・入管庁自らの招いた犠牲者をこれ以上出さないように

・国籍、在留資格を持っていないだけで人としての権利を持てない人を見過ごすな

議員会館前での採決阻止行動の現場から駆け付けてきた松本浩美さんは、本日26日の法務 委員会は立憲民主の反対動議があり、採決は28日となったと報告があった。

 

◆弁護士指宿昭一さんの怒り 廃案一択で!

続く動画は、指宿弁護士の怒りがさく裂する。「野党は修正協議をするな!もしすれば、 廃案にできない」「市民の反対の声が多くなれば、国会内の力関係に関係なく止められる 」と声を振り絞る。

 

◆基本知識の解説

・難民申請、在留資格⇒日本の難民受け入れ率1%に満たない。難民申請が受け入れられ なければ、在留資格がないとされ、入管庁に収容される

・収容⇒在留資格のない者が無期限で収容施設に収容されること(国連の拷問委員会は、 日本に是正の勧告を出している)

・仮放免⇒一時的に収容所外で生活できるが、働くことは出来ず、居住地都道府県を越え ての移動は許可がいる。健康保険もない

・送還忌避者に対する刑事罰⇒帰国を拒否(帰国すれば命が危ないなど)する人を罰する 。現在の対象者は、4233人

・難民申請は2回まで⇒これまでは申請中には送還されなかったが、改定案では、3回目以 降は送還停止規定が適用されず、強制送還できる

 

◆小池宏之さんが参加する#FREEUSHIKUとは

2018年に長期収容のインドの人が収容を苦に自殺したことがきっかけで、収容者の抗議活 動がおこった。それを知った人々によってつくられたのが#FREEUSHIKU。そのメンバーの お一人、小池宏之さんは牛久の入管での収容者と面会などのボランティアをしている。他 にも物質的支援や入管問題の勉強会、議員へのロビーイングなどの他、HP、SNSでの告知 なども。若いメンバーが中心で、得意分野で活動をしている。

 

◆収容施設で毎年のように起きる自殺や病死事件~刑務所の方がまし!

牛久の収容施設は、以前は400人くらいいたが、コロナになってから60人前後に。

難民認定不許可を受けた人のうち、半数以上は帰国(自発的・強制送還)しているが、残 りの半年以上収容されている人たちが問題になっている。帰国を拒否した場合「送還忌避 罪」という刑事罰が科されるのだが、それらの人々は、自国の政情不安から故国に戻れな い人の他、日本に生活の基盤がある人や日本で生まれた子どもたちなどである。

長期収容者の健康状態、特に先が見えない(懲役と違い期限が決まっていない)ことによ る精神的不安などが問題で、期間の決まっている刑務所の方がましと言わせている。

 

◆決定権は入管庁だけにある

これら収容の決定権は入管庁にだけあり、プロセスが外部に見えないことか大きな問題だ と指摘。他にも体調不良を訴えると市販薬はくれるけど、医者の診察はなかなか受けられ ないなどもある。 今回の法改正をみると、これまで言われている問題点は何一つ改正されていないうえ、入 管庁にとって都合のいい改正という印象だ。

 

◆仮放免者を民間に監視させる⇒入管庁の手抜き

民間の管理人を定めて監視させるということも含まれているが、怠れば罰則もあるだろう から委託された民間組織は、つい「監視」するようになるので、自分の考えとも既存の民 間組織の方針とも乖離するので、引き受けないだろう。

 

◆悪法改正阻止の国会前行動の動画が流れる

議員会館の前で行われているシットインの19日の動画上映から始まる。労働基準法に使用 者は国籍・信条・社会的身分によっての差別を禁止しているにも関わらず、入管法に象徴 されるような国籍差別が現存していると、労働現場からの怒りの声が上がる。また外国籍 と思われる方からも「難民を犯罪者と決めつけるな」「強制送還を合法化するな」と声が 上がる。

 

◆夫のナヴィーンさんが仮放免中のナオミさんは訴える

仮放免中のナヴィーンさんを含め、家族4人を支える妻、ナオミさんがオンライン参加する。 スリランカ国籍のナヴィーンさんは難民申請を2回拒否されているのでもし法改正された場合 、次回拒否されれば強制送還になる。それで彼は、精神的に追い詰められ、ベッドから離 れられない状態だという。

彼が22歳の時、父親と反政府のポスターを張っているとき、政府側の人の暴行を受ける。 その後、父の配慮で留学ビザをとり、日本に脱出。ところが4か月後にはその学校が封鎖 され、ビザを失う。2016年にナオミさんと結婚するも、ビザは下りなかった。

 

◆正規の婚姻を認めながら実子がいるかどうかにこだわるのはなぜ?

ナオミさんは入管庁へ行き、正規の結婚であることの調査を依頼するも(ビザのための偽 装結婚があるため)、入管庁は正規の結婚であることは認めつつ、調査もせずに配偶者ビ ザを出さない。その理由が、組織で動いているから、窓口の一存では決められないとか!  開いた口が塞がらないとはこのことだ。

 

◆難民申請をなかなかしなかったわけ

・難民申請をすると、母国の家族に難が及ぶ可能性がある

・難民申請のやり方を知らなかった(入管庁は、やり方を教えたがらない)

 

◆仮放免とは人権・生存権のない状態

・就労も社会保障、公的サービスも受けられない

健康保険証はもちろんないので、病院に行かれないなどの他、家族なのにナオミさんを妻 と認めず、人間として扱われない。加えて、施設に強制収容される恐怖もある。

 

◆ナヴィーンさんの病気

ナヴィーンさんは、椎間板ヘルニアの手術をし、その後自殺未遂を2度ほどした。適応障害か らうつ病と診断される。その症状について話すナオミさんは、とても辛そうである。

 

◆それでも母国に帰れないのはなぜ?

2つの理由がある。1つは、帰国すると政治犯として命の危険があること。もう一つは、家 族と一緒に平穏に暮らしていきたいという強い思いがあるから。 一人で帰せば、本当に自殺するかもしれない。それだけは避けたいと悲痛な気持ちを語る 。

 

◆在留資格を求めて裁判を起こす

ナオミさんたちが、面倒な裁判を起こした訳を語る。願いはただ一つ、家族みんなが穏や かに日本で暮らしたいから。

医師は在留資格を得て安心して暮らせなければ、病気の回復は望めないというので、どう しても在留資格が必要。だから、裁判に踏み切ったという。

ここで第1回口頭弁論のナヴィーンさんの陳述のメモが読み上げられた。人としての当たり前 の生活がしたいと切々と訴える言葉は、涙なくしては読むことも、聴くこともできなかっ た。

 

◆ナヴィーンさんの次回の法廷は「6/6東京地裁703法廷14: 00から」

傍聴だけでも支えることになるということだ。

 

*「ジョニーと乱の5ミニッツ」

・川柳 入管の字が入棺に見えている     奥徒

   白人にはヘラヘラアジア人にはトゲトゲ 一志

   入管解体希望の明日はきっと来る    乱鬼龍

・歌 作詞作曲:ジョニーH 「私はコスタリカ憲法31条だ」


●182号(2023/4/12)放送 : 小出裕章さんに聞く〜「原発回帰」ホントにいいの?

<速報>

 4月12日のレイバーネットTVは「小出裕章さんに聞く〜「原発回帰」ホントにいいの?」でしたが、100分間たっぷりお話を聞くことができました。まったく手つかずのフクシマ原発の燃料デブリのことをはじめ、全廃するしかない原発の話。しかし金もうけとプルトニウム軍事転用のための「原発回帰」をすすめる岸田政権の話など、わかりやすく本質を突く話を聞くことができました。でもなによりもインパクトがあったのは、小出さんの生き方そのものでした。「死生観」の話にスタジオは一瞬凍り、感動を呼びました。ぜひアーカイブをご覧ください。(M)

 

以下は、寄せられたコメントなどです。

●久しぶりの小出さんのお話しをお聞きして、感銘を、受けました。番組への出演に御尽力していただいた皆様他、ありがとうございました。一人になっても言いたいことを言うですね!

●井戸川町長は(小出さんと同じように)「本物」だったのですね。小出さんとレイコさんもまた。同じ星を頼りに同じ島を目指す僚艦。命を軽んじる者たちに戦いを挑む。

●とてもいい番組でした。小出さんの死生観まで聞けてとても良かったです。先ほどJアラートが発せられました。北海道には落ちなかったようですが、これを機に憲法改正を加速化させるのでしょうね。いよいよいつでも戦争ができる国になります。小出さんの「いつ死んでもいい」という言葉が、今強く響いています。


科学者というより哲学者 感想=黒鉄好

 小出さんの講演会には何度か参加しています。話を聞くたびに思うのですが、すぐに数値の話に持って行きたがる御用学者と違って、小出さんのお話は「人間として我々はどのように生きるべきか」を説いていて、科学者というよりはむしろ哲学者のようです。

 

「いつ死んでもかまわない」という小出さんの死生観には強い共感を覚えます。3.11を福島で迎えたとき、私自身も「ああ、これで自分は死ぬんだ」と思ったからです。私もスピーチや講演を依頼されたときは「原発の電気を使うくらいなら死んだ方がマシだ」と発言し続けてきました。3.11以降の12年間、「今日が自分の人生最後の日になっても恥ずかしくないように生きよう」と思い、それを実行してきました。カネのために原発を動かし続けようとする人たちに小出さんや私のような覚悟があるようにはとても思えません。

 

 ウクライナ戦争で未曾有のエネルギー危機に直面しながらも、ドイツは4月15日限りで原発を卒業します。メルケル政権に脱原発に踏み出すよう助言した「脱原発倫理委員会」の筆頭委員は社会学者ウルリッヒ・ベックでした(「危険社会~新しい近代への道」というベックの著書が日本語訳されています)。ドイツでは原発が「安いか高いか」や「エネルギーとして有効かどうか」ではなく、倫理や道徳の面から原発の是非が話し合われました。議論の結果、ドイツが選び取った結論は「倫理、道徳に反する原発は廃止すべき」でした。

 

 原発は倫理、道徳に反している--この点での国民的合意を形成できたからこそドイツは脱原発を実現できたと私は考えています。未曾有の事故を起こした原発を反省もなく再び「最大限活用」するなどと寝言を言っている日本と、原発を倫理、道徳に反する電源と認定し、苦しいエネルギー事情の中でも脱原発に踏み出したドイツ。この違いはどこにあるのか。

 

 ドイツにあって日本にないもの--それは「哲学」だと思います。人としてどうありたいか。日本はどんな国を目指すべきか。国際社会でどんなポジションを占めたいか。そんな大局的な議論を日本人がしている姿を、私はもう何十年の単位で見ていません。目先の課題も大切ですが、日本が滅亡の淵から脱したいなら、哲学を持つべきです。小出さんひとりにその役割を負わせるのでなく、私たちひとりひとりが「人間として我々はどのように生きるべきか」を自問自答し、他人にも回答を迫るべきです。その上で、原発をどうすべきか問うならば、答えはしかるべきところに落ち着くと私は信じます。


ずしん、ずしんと心に響いた小出裕章さんのお話 感想=内藤洋子

 4月12日のレイバーネットTVで小出裕章さんの話を聞き、深く感動しました。小出さんの泰然とした態度に、まず畏敬の念を持ちました。そして、もの静かに語る一言、一言が、ずしん、ずしんと心に響きました。

 原発の危険性については、とにかく人間の手には負えない危ないもの即刻廃止すべしという認識は持っていましたが、小出さんのお話を聞き、より科学的にその理由を知ることができました。3.11から12年が経ち、福島がテレビニュースなどで話題になるのは、久しぶりの花見や祭りに人に賑わいや笑顔が戻ったという場面のみで、「復興」を印象づける意図のものばかりです。その祭りの後の日常、普段の風景はどんななのでしょう。とてもニュースにはならないのでしょうね。

 岸田首相は、涼しい顔をして、とてつもない大きな間違いを犯しているのではないか。そしてその事態がどんどん進行しているように思われてなりません。日本の政治の箍(たが)が外れてしまったようです。近年、原発新増設や軍拡などに反対の声を挙げる人の数が減ってきていることを、どうしたら良いかとのギャラリーからの質問に対し、小出さんは、少し考えてから、「私にもわかりません。しかし、あきらめないことです。一人になっても。」と言われた言葉が、心に残りました。「その日、その時を、常に自分の全存在をかけて行動し、発言する心構えで生きる」という姿勢に学びたいと思いました。

 イコマさんが小出さんに心酔し、密着取材して膨大なドローイングをした気持ちが良くわかります。映像ではイコマさんの出版された画集のタイトルなどがよくわかりませんでしたので、アップで映して下さるとよかったです。このTVをご覧になっていない方に、一人でも多く、アーカイブで見ていただきたいという思いで、投稿しました。よろしくお願い致します。(レイバーネット会員)


小出裕章さんが書いた「生命の尊厳と反原発運動」を紹介します

 レイバーネットTV182号の小出裕章さん特集では、大きな反響があり、たくさんの感想が寄せられました。私は土田修さんと一緒に企画を担当しましたが、イコマレイコさんの力もお借りしながら、小出さんの魅力を伝えることができてよかったです。とりわけ、人間の生き方、死生観にまで踏み込んだ話は、すでに講演や著書で小出さんを知っていた私にとっても、心を揺さぶられるものでした。

 驚いたことに放送終了後、小出さんがスタッフ宛にメールを下さいました。そこに「レイバーネットTVでは、原子力や福島事故のことだけでなく、子どものことまで口にしてしまい、余計なことだったと反省しています。でも、生き方そのものについてお受け止めくださったようで、感謝します」という一文と共に、1990年に書いた文章が添付されていました。「生命の尊厳と反原発運動」という文章です。これは小出さんの著書「放射能汚染の現実を超えて」(北斗出版、河出書房新社)におさめられているものですが、多くの皆さんに読んで欲しいと思い、ご本人の許可を得た上でここに紹介します。(堀切さとみ:レイバーネットTVスタッフ)


<生命の尊厳と反原発運動>

【人類は自ら蒔いた種で、遠からず絶滅する】

 五十億年近いといわれる地球の歴史の中で、人類といえる生物種が発生したのはわずか数百万年前のことである。その人類は自らの生物種が属する類を、「霊長類」と名づけ、そして自らのことを「万物の霊長」と名づけている。しかし、人類の種としての絶滅は、いまやはっきりと目に見えるようになってきた。

 

 過去二〇〇年ほどの間に科学技術は急激に進展し、浪費も拡大した。その歴史は、人類の種としての生存がそれほど長く続かないことを示している。核戦争、原発事故による放射能汚染、その他の化学物質による汚染、資源やエネルギーの浪費による環境の破壊、それらのいずれもが人類の絶滅をもたらす力を持っている。何が決定的な絶滅の要因になるかは断定できない。しかし、人類の生存可能環境を人類自らが失わせるまでに、どんなに長くとも一〇〇年あるいは千年の単位であることは疑えない。結局、人類の今後の生存期間は、数百万年という過去の生存期間からみれば、いずれにしても誤差の範囲でしかない。

 中世代に地球を征服していたといわれる恐竜は、ある時期に突如として地球から姿を消した。「万物の霊長」たる人類からみれば、巨大であっても、まことに頭の悪い野蛮な動物であったというのが一般の見方であろう。しかし、その恐竜たちは一億年にわたって種を維持していたのである。恐竜の絶滅の原因については現在でもさまざまな議論が続いている。それを、宇宙からの巨大な隕石落下に求める説もあるし、進化の過程で巨大化しすぎ自らの生命体を維持できなくなったためとする説もある。しかし、恐竜からみれば、いずれにしても万やむを得ない過程を経て絶滅にいたったのである。それに比べ、人類の絶滅の決定的な要因は、人類が自ら蒔いた種によるのである。まことに自業自得というべきであるし、人類は恐竜以上に愚かな生物種であったというべきだろう。

 

【人類が絶滅しても、地球は新たな生命を育くむ】

 現在世界には一万七〇〇〇メガトン、広島の原爆に換算すれば、一四〇万発分の核兵器が存在している。それが一挙に使用されることになれば、ほとんどの人々が即死、あるいは短期日のうちに死亡する。また、かりに直撃を受けず生き残っても、訪れた「核の冬」のもとで、じわじわと生命をむしばまれていく。複雑な遺伝情報をもった人類が、放射能汚染のもとで種として生き延びることも、できそうにない。

 

 一九七九年に米国のスリーマイル島原子力発電所で大きな事故が起こった。当初、原子力推進派は原子炉の心臓部である炉心は熔けていなかったと主張していた。ところが最近では、炉心の約半分が熔けてしまっていたこと、最後の砦である圧力容器にもひび割れが入っていたことなどが明らかになってきた。その原発の安全担当者は「何が起こっているのか、もしあの時運転員に分かっていたら、彼らはあわてて逃げ出していただろう」と、事故後七年半を経て語っているのである。まことに原子力発電の事故は、人知をこえて展開するのである。しかし、この事故の調査の過程で、一般には知られていない、そして、はるかに重要で驚くべき事実が明らかになった。

 圧力容器の蓋があけられ、水底深く沈んでいる破壊された燃料の取り出し作業が始まった。しかし、作業を始めたとたんに、うごめく物体によって中が見えなくなってしまったのである。そこは、人間であればおそらく一分以内で死んでしまうほど強烈な放射線が飛び交っている場所である。「さながら夏の腐った池のようだった」と作業員が報告したその物体とは、なんと生きものであった。単細胞の微生物から、バクテリア、菌類、そしてワカメのような藻類までが、炉心の中に増殖し繁茂していたのである。それを発見した作業員の驚きと、戦慄は察して余りある。結局、作業を進行させるために、過酸化水素(薬局ではオキシドールとして売っている殺菌剤)を投入して、その生きものは殺される。しかし、一度殺されたはずのその生きものは驚異的な生命力で再三再四復活し、以降何ヵ月にもわたって、作業の妨害を続けるのである。人間からみれば、ぞっとするほどの恐ろしさである。しかし、どんなに強い放射能汚染があっても、新しく生命を育む生きものたちが存在していたのである。生命は、人間の想像をはるかにこえてたくましかった。

 しょせん人類などは宇宙や地球の大きさや広さからすれば、まったくとるに足らないものでしかない。人類がこの地球上から絶滅しても、宇宙の運行はまったく変わらずに続くに違いない。また、人類が自らのものと錯覚してきた地球も、人類がいなくなったところで、何事もなかったかのように、また生命を育むのである。地球上には五〇〇万種とも一千万種ともいわれる生物種がそれぞれの生活を営んできた。人類はこれまでにも、それらのうちの数多くの生物種を絶滅に追い込んできた。そして、自らの絶滅の過程においてもまた、多くの生物種を巻き添えにする。そのことはまことに申し訳ないことだと思う。しかし、人類という生物種がいなくなった地球は、生き残った、あるいは新たに生まれた生きものたちにとって、今日よりももっともっと住みやすいに違いない。

 

【反原発の根拠】

 すでに四年の歳月を経てしまったソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故以降、世界各国において原子力に反対する運動が高揚した。そして、日本というこの国においても、多くの人たちが、事故の恐怖を理由に立ち上がった。およそすべての運動は、抑えても抑えても内部から沸き上がってくる要求に突き上げられた時に、はじめて力を得るものである。反原発運動の高揚も、そのような力に突き上げられたものであると思う。しかし、運動の展開の中で、私にはどうしても受け入れられない動きもあった。そのもっとも端的なものは、汚染の強いソ連やヨーロッパの食べものを日本国内に入れるなと、行政に規制強化を要請する運動である。

 

 人類は、他の生きものたちとの比較でいえば高い知能をもった生物としてこの地球上に現れた。その結果、自らを絶滅させるに足る程度には、さまざまな知識や技術を蓄えてきた。しかし、ごく当たり前のこととして、人類にはできないことも無数にある。たとえば、原爆や原子炉によって人類は放射能を生み出すことはできるようになったが、一度生み出してしまった放射能を消すことができない。チェルノブイリの事故で、人類の生活環境にまき散らされた放射能の量は、広島の原爆がまき散らしたそれに比べて、千五百倍にもなるのである。また、人類には時間をもとに戻すこともできない。もし私に時間をもとに戻す力があれば、なんとしても四年だけもとに戻し、チェルノブイリの事故がなかったことにしたい。しかし、できないのである。時間を元に戻せない以上、私たちは汚れた環境の中で汚れた食べものを食べながら生きる以外にすべがない。

 放射能は人間の手でなくすことができない。煮ても、焼いてもなくならない。日本国内に入ることを阻止できたとしても、当然、放射能はなくならない。放射能で汚染した食べものもなくならない。日本と日本人が拒否した食べものは、他のどこかで、他の誰かが食べることになるだけである。どこで、誰で食べることになるのか、想像してみてほしい。私には、それが原子力の恩恵など一切受けず、そして飢えに苦しむ第三世界であり、そこに住む人々であることを疑えない。一方、日本とは、現在三十八基もの原子力発電所を利用し、世界でももっともぜいたくを尽くしている国である。そして、その日本は世界がいっせいに原子力から撤退しようとしている今もなお、先頭になって原子力を推進すると宣言している国なのである。

 現在世界には約五十億の人間が住んでいる。それを四つのグループに分けて考えよう。そのうちのもっともぜいたくなグループは、いわゆる「先進国」と呼ばれる国々である。幸か不幸か日本もその中に入っている。そのグループは世界全体で使うエネルギーの八割を奪い去り、使ってしまう。次のグループはいわゆる「開発途上国」であり、残されたエネルギーのうちの六割(全体のうちでは約十二%)を使う。残されたグループはいわゆる「第三世界」に相当するが、その中でもエネルギーの取りあいがあって、もっとも分け前の少ないグループ、「極貧の第三世界」は全体の二%のエネルギーも使うことができない。彼らの中には飢えが広がり、現在二秒に一人づつ子供たちが餓死しているというのである。日本に住む私たちには自分の子供たちが餓死していくということは、ほとんど想像すらできない。しかし、できるかぎりの想像力を働かせて想像してみてほしい。自分の目の前で、自分の子供たちが「餓死」していく姿を。

 餓死していく子供たちとそれを見つめる以外にない親たちを、私たち日本人は「かわいそう」というべきでない。なぜなら、子供たちを餓死に追い込んでいるのは、不公平をかぎりなく拡大させてきた「先進国」であるのだし、その中で、「豊か」で「平和」な世界を満喫してきた他ならぬ私たち自身なのである。

 

【生き方の中にこそ生命の尊厳はある】

 人類はいずれ絶滅する。生物として当然のことである。恐れるべきことでもないし、避けられることでもない。それと同じように、一人ひとりの人間も、どんなに死を恐れ、死を回避しようとしても、いずれ死ぬ。一人の人間など、ある時たまたま生を受け、そしてある時たまたま自然の中に戻るだけである。人間の物理的な生命、あるいは生物体としての生命に尊厳があるとは、私は露ほどにも思わない。もし人間の生命に尊厳があるとすれば、生命あるかぎりその一瞬一瞬を、他の生命と向き合って、いかに生きるかという生き方の中に、それはある。

 

 原子力に反対して活動している人たちの大きな根拠の一つに「いのちが大事」ということがある。しかし、「いのちが大事」ということだけなら、原子力を推進している人たちにしても否定しないだろう。決定的に大切なことは、「自分のいのちが大事」であると思うときには、「他者のいのちも大事」であることを心に刻んでおくことである。自らが蒔いた種で自らが滅びるのであれば、繰り返すことになるが、単に自業自得のことにすぎない。問題は、自らに責任のある毒を、その毒に責任のない人々に押しつけながら自分の生命を守ったとしても、そのような生命は生きるに値するかどうかということである。

 私が原子力に反対しているのは、事故で自分が被害を受けることが恐いからではない。ここで詳しく述べる誌面もないし、その必要もないと思うが、原子力とは徹底的に他者の搾取と抑圧の上になりたつものである。その姿に私は反対しているのである。

 もちろん私も放射能など決して食べたくない。しかし、私たちは自ら選択したか否かにかかわらず、少なくとも現在日本というこの国に住み、原子力の電気をも利用している人間である。現に原子力の恩恵を受けている私たちが、結果としてであれ、汚染だけを第三世界の人々に押しつけることになる選択をすることは、原子力を廃絶する道とは相いれない。今日存在している多様な課題を乗り越えるための唯一の道は、それらの一つひとつと取り組んでいる多様な運動が、根元的な地平で連帯することである。その連帯を可能とする原則だけは、なんとしても守り抜かなければならない。

 ソ連やヨーロッパの汚染食料については、日本国内にどんどん入れるべきである。その上で、いかにすれば自らの責任を少しでもはたし、責任のない人たちに少しでも犠牲をしわ寄せしないですむかを考えること、そして現実の中で一つひとつ選択することこそ、いま私たち日本人に求められている。私は、日本の子供も含め世界中の子供たちに汚染食料を食べさせたくない。しかし、私自身はこの日本という国に生きる大人として、それなりの汚染を受ける責任があると思っている。チェルノブイリ事故後、私は敢えて汚染食料を避けない生活を続けてきた。今後もそのつもりである。そうすることで、現実の汚染が消えるわけではないし、世界の差別全体が解消されるわけでもない。当然、私の苦悩が消えるわけでもない。世界に苦悩があるかぎり、個人の苦悩が消えることなどありえない。世界がかかえる問題に向き合って、いわれない犠牲を他者に押しつけずにすむような社会を作り出すためにこそ、私の生命は使いたい。そして、そのような社会が作り出せたその時に、原子力は必然的に廃絶されるのである。(一九九〇・二・二十六) 小出 裕章


笠原眞弓の詳細報告:小出裕章さんの生き方に迫る

<小出裕章さんに聞く〜「原発回帰」ホントにいいの?> 2023年4月12日

放送日当日、このスタジオに小出裕章さんをお迎えすると思っただけで緊張していた。共演して下さるイコマレイコさんの画集「Koide Blue 絵筆で捉える魂の人」から小出さんのスケッチをコピーして貼る。生身の印象とはだいぶ違う鋭い面立ちの彼が迫って来る。ご本人は、長身を柔らかな笑顔に包んで、嬉しそうに「労働者の 労働者による 労働者のためのレイバーネットテレビ(リニューアル前のキャッチコピー)」といいながらスタジオに現れた。思わずこちらの緊張も解ける。そして語られたのは「人間小出」だった。

〈1部〉人の命より大事なもののある政府

◆人がコントロールできないものをコントロールしようとしている恐怖1~3号機の炉心はどうなっているのかハッキリしないまま再稼働・稼働期間延長に突き進む岸田政権に危うさを感じているがと問うと、小出さんは12年前、電源が喪失して原子炉が融けた。中心部分は、ウランを焼き固めたペレット。そのペレットは2800℃を越えないと解けない。それが熔けたということは、それを入れている圧力釜は、1400~1500℃で熔けるので、底が抜けて格納容器のコンクリートの床を(100℃で溶ける)爆裂させているはず……。でも、現場に人が行かれず、ロボットも放射能被曝に弱いので近づけなかった。最近やっとそばまで行けるロボットが出来てきたという状態で、正確なことは不明だと。今年3月11日のNHKの報道では、融けた燃料デブリ880tのうち、2号基で1gを取りだせるというが、小出さんはそれでも貴重な資料になるとはいうが……。

 

◆絶対出来ない廃炉スケジュール 「30年~40年で熔けた燃料デブリを県外へ」

当時を振り返ると、地震の翌日1号機で水素爆発が起きた。この時点で深刻な事故だと小出さんは確信するが、東電・国側は虚偽報告で事故を過小に表現し、メルトダウンと言い出したのは、5月になってから。原子炉から燃料プールに移されていた4号機の爆発が防げたのも、奇跡的だったという。燃料棒は当時、原子炉格納容器の外側の水の入った燃料プールにあった。そこにもし水がなくなったら、東京すら人がすめなくなったのだが、辛うじて燃料プールに水を入れ続けられたため避けられた。廃炉作業の工程表は、現在「30年~40年で熔けた炉心を取り出し、福島から運び出す」だか、そのような短い期間では、絶対出来ないと断言する。

 

◆除染とは移染である 安全になるわけではない

立ち入り禁止区域の解除が続き、人々が戻り始めているがどうなのか? その質問に答えて小出さんは「一番危ないセシウム137は半分になるのに30年。100年で10分の1。そうなっても、未だ汚染地帯で安全ではない」と指摘。汚れを「除染」するといっているが、その汚れとは「放射能」。これは取り除くことは出来ない。汚れを移す「移染」でしかないと、きっぱりという。しかもそれは家の周りだけの「移染」なので地域が安全になったわけではない。双葉町の駅舎や役場などは建設されたが、本当に戻れる人は一握りの、故郷で死にたいお年寄りや、どうにも戻らなければならない人が戻るだけだろうという。

 

◆「原子力緊急事態宣言発令中なのに子どもも生活できる」不思議

福島県内で暮らしている人々の間では、初期の山下俊一氏の「二コニコしていれば大丈夫」「除染したのだからいい」と信じれているではないか。もしあの時期、小出さんが福島へ行っていたら、被災者になんと言ったか?と問うと「即刻逃げてください」と言ったと。小出さんは京都大学原子炉実験所にいて、放射能を取り扱うときには「放射能管理区域」という特殊な場所に入った。そこでは、すべての飲食が禁じられ、排せつも出来ず、「生活」が拒否される。ところが、その基準を超えているところが、福島県内に広大にあり、そこで子どもを含めた人たちが生活している。なぜできるのか? 「原子力緊急事態宣言発令中」だから!これは国家による棄民だと激しく迫る。

 

◆国・県にとっての復興―「被曝安全神話」

現在は、次々箱物建設が進み、建設労働者が入って被曝している。それを国や東電は「福島は復興している」と称している。そして、国は「被曝は大したことない」と言っている。だが、被曝は目に見えにくい。がんにしても、他の病気も、被曝以外でも罹るので、「これだ」と言えない。それが被曝の恐ろしさであり、それを逆手に取った彼らの言い分「被曝は怖くない」なのだ。

 

〈2部〉全力で生きる姿

◆『Koide Blue by Reiko Ikoma絵筆でとらえる魂の人』の誕生秘話

700枚を超えるドローイングを描いたイコマレイコさんに、本が生まれたきっかけを伺う。イコマさんが小出さんを知ったのは、原発事故後に放射能など自分で勉強をしている時に小出さんの「大切な人に伝えてください」という講演の動画を見た。そこに映し出された小出さんは、十字架を背負っているように見えた。その後も本を読み、東京での講演会を聴きに行った。小出さんの内面に引かれて描きたくなった。メールを出すと「お断り」の返事。でも、続けて勝手に描くことを止めたりはしませんとあったと。小出さんは、当時、寝る時間もないくらい忙しかった。福島の事故を正確に伝えることが使命と思っていたので、モデルになる時間はなかった。ただし、仕事をしているところを勝手に描くならどうぞと答えたら、本当に来ちゃったのですと笑う。月1回、2年間通ったと。小出さんの闘いは長きにわたって理不尽な環境の中でも、一本貫くものがある。それをBlueと捉え、自分が使う絵の具が、Blueが好きということからも自然に出てきた言葉だったとイコマさん。

 

◆「一人でもいい、必ず戦い続けよう」―小出さんの言葉

本の中に、小出さんとイコマさんの対話があり、上記の他、心に沁みて来る言葉があった。

・「未来の子供たちに問われる、あの時代にお前たちはどう生きたのかと」原発事故の国や人々の動きが、戦争の時と似ていると思った。優秀な日本人と思えば思うほど、国に協力して、戦争反対する人を自分たちの手で殺した時代があった。そして敗戦後、彼らは「軍部に騙された」と言い訳をいった。しかし、一人ひとりがどうやって生きたかが大切で、どう生きてきたかを答えられる人間でありたいと思った。

・「ここにいる生き物として、自分がやりたいように生きなかったら損だ」と思う。本にまとまった時の最後の言葉が「イコマさんよくやったね、私、うれしくないけど」だが、それは最初から織り込み済みだったとイコマさん。だが、彼女が、出版に当たってこの本の売り上げをチャリティーにしたいというと、そんな些末なことはいいから、一番大切なことは、仕事としてまとまることと言われたと。それができるのがうれしいと言われた。

 

◆瞬間、瞬間を「生き尽くす」ことを教えてくれた次男

お互いに母親のことなどで、死にまつわる話を2人でした。その中で「いつ死んでも構わない。長生きするよりさっさと死にたい。もちろん、今でもいいです」と言った。小出さんは3人のお子さんがいる。その2番目の子が障がいをもって生まれ、半年しか生きられなかった。その時、人間は自分でどうにもできないことがあるということを骨身に沁みて感じた。大切なことは、生きているこの瞬間である。次の瞬間死んでいてもいいということを、その子に教えてもらったという。そして、続けて「今でもいいですよ」とにこやかに言う。

目の前のにこやかな小出さんと、イコマさんの描いた小出さんの鋭さのギャップが埋まる感じがした。

 

〈3部〉これからどうしたらいいのか

◆次世代型小型原子炉の開発って?

・岸田首相は「原子力を最大活用」というが大丈夫?

次世代型革新炉とは、今までの次世代型の軽水炉と同じもので、小型炉にすれば安全など、他にも様々なことを言っているが絵空事と切り捨てる。唯一そうでないのは、革新炉くらい。これは、今ある原子炉の安全性を少し高めたもの。だが、これはヨーロッパではすでに長年取り組んで来たもの。現在フランスとフィンランドで製造されつつあるが、費用が莫大で、出来ないのではと言われている。中国では稼働を始めたが、トラブルに見舞われている。それに取り組むということだが、費用的にできないだろうという。

・小型炉は安全か? 

トータル発電量が同じなら危険も同じと、バッサリ。現在の原発1基の発電量は100万kWが標準発電量だが、10万kWの炉を作っても、それを10基つくれば、放出される放射能は同じなので、安全とは言えない。大型化していったのも、採算の問題だった。東海原発の16万kWから始まり、敦賀は30万、美浜原発は34万になり、今は100万kWになった。後戻りはしないだろう。その他の構想も何十年も前からあったもので、今後も実現しないだろ。しかも、日本には独自の原子力技術はないという。

◆原発はやればやるだけ儲かる仕組

原発から離れられないのは儲かるからとズバリ指摘。原子力産業は「国策民営」と言われ、国がさまざまな法的土台を作り、やれば必ずもうかる仕組みにして電力会社を引きずり込んだ。しかもあのような大事故を起こしながら、小出さん言うところの原子力マフィアである東電は倒産もせず、黒字企業に戻った摩訶不思議。事故後は「除染(小出さんは移染だと)」「復興」と称して、東電同様の原子力マフィアのゼネコンと原子力産業、軍需産業が儲けている。

◆原子力発電事故から学んだ教訓の違い

この事故で小出さんは「原子力発電の途方もない危険=故に即刻全廃」を学んだという。ところが、原子力マフィアたちは違った。「どんな悲惨な事故を起こしても、誰も責任を取らずにすむ。そして大儲けもできる」である。事故後の彼らは、怖いものがなくなってしまった。だから役人も含めてかかわった人達が、さらなる推進を画策している。それが現在の状況だと。

◆「甲状腺がん増加は関係ない」を覆すのは科学

今甲状腺がんが福島の子どもたちに高頻度で発病している。現在7人の当時子どもだった人たちが訴訟を起こしているが、事故との因果関係を立証することがとても難しい。国は「検査を厳密にするから発見されている」とうそぶく。だが、通常100万人に1人か2人しか罹らない甲状腺がんに、福島のこどもたち30万人の検診で、すでに300人が発症している。「異常な」発病率である。国は「検体数が多くなったので、これまで見つからなかったものが見つかった」と言っているが、科学ではこれまで調べてこなかった地域を含めて検査することで、増加、非増加を立証することもできる。国側は、それをするべきだ。訴訟を起こすことは、カミングアウトすること。心無い人に「福島の復興の邪魔」などと言われる。それが子どもたちに大きなストレスになっている。その子どもたちを支えるために、この調査をして「こんなに発症している」ことを科学的に実証していきたい。

◆原発事故を忘れさせてなるものか!

政府が自分の思い通りにしたいときには「マスコミ」と「教育」を使う。原子力マフィアである政府も電力会社もその2つを支配しながら、事故をなかったことにしようとしている。それに惑わされた市民は、まだ原子力緊急事態宣言が継続していることを忘れる。

◆「汚染水」か「処理水」か 「処理途上水」とは?

今問題になっている汚染水の海洋投棄はどうなのか?

政府は「汚染水」と言いたくないから「処理水」とごまかしている。原発の敷地内に、アルプスと名付けられた処理装置があり、その装置で処理したものを「アルプス処理水」という。ところがどう処理しても、トリチュウムは絶対除去出来ないのだ。それを「処理途

上水」と呼んでいる。

◆福島の「汚染水」の「海洋投棄NO」では六ケ所を動せない?

福島にある「汚染水」は、最終的に海水で薄めて海に捨てようとしている。福島で事故が起きなくても、国内の原発の汚染水は六ケ所の処理場でプルトニュウムを取りだした後、残りをガラスに固めるが、トリチウムだけは海水と共に海に捨てる予定だった。もし福島の汚染水が海に捨てられないとなると、六ケ所の処理水も捨てられず、日本の原子力は根底から崩れる。ところがそのまま海洋投棄以外に現実的な方策があるのに、それをしようとしない。例えば、タンクの増設、地下に圧入、モルタル固化などもあるのだが。

◆トリチウムは環境中では水 水を汚す究極の環境汚染

トリチウムはベーター線しか出さないので、比較的安全とか。でも危険の程度が高いか低いかであって、安全な放射能はない。トリチウムは水素で、環境に出てくると水になる。水で出来ている地球を汚すことは、究極の環境汚染。そもそも捕まえることもできないトリチウムを作り出す行為そのものを、やめるべきである。

◆原発は原爆を造るためにある

日本は46tのプルトニウムを保有している。「原子力の平和利用」は絵空事。核武装していることである。平時の技術がいったん戦争になれば、軍事に使えるのは常識。「原子力の平和利用」も長崎型原爆を造るために進められてきたし、今後もやる」と表明した。

◆フロアーからの質問に答えて

問:安倍元首相を嫌いと言いながら、常に「安倍さん」というのはなぜ?

答:安倍さんは大嫌い。息を吸うようにウソを言った。その嘘を隠すために犠牲者まで出た。だが、いい人も悪い人もかけがえのない人である。だから呼び捨てにしない。

◆民主主義とは主権者自身が自分の意思を表明すること

問:2013年からたくさんの人が国会前に集まったのに、今や少ない。目覚めてもらうには、どうしたらいいか?

答:あきらめた時が最後の負けになる。一人になっても言いたいことは言い続けるほかない。澤地久枝さんの呼びかけに応えて、2015年から毎月3日に「アベ政治を許さない」のスタンディングを松本駅でしている。1回で終わりかと思ったら、毎月するという。それではと、小出さんは今でもやっている。安倍さんがいなくなってもアベ政治は今も続いている。本人(小出さん)は「私はします」ということで、呼びかけていないが毎回30人ほどが参加しているとか。「民主主義とは、投票に行くことだけではない。主権者の1人として、常に自分の意思を表明する事だと思っている。くじけないでやり続けることが唯一の方法だと思っている」

という言葉を肝に銘じたい。

        

◆ジョニーと乱の5ミニッツ

川柳  原発という愚かさと罪と罰    乱鬼龍 

処理水と世界あざむき海死なす  八金  

歌  「ノーニュークス ノーリスタート」 ジョニーH

 

・次回は4月26日19時30分から入管法改悪問題をとりあげます。


●181号(2023/3/22)放送 : いつもビクビク!三年で全員雇い止め〜会計年度任用職員制度の闇

国が憲法違反してまで抑えたい「働くものの権利」 報告=笠原眞弓

 

会計年度任用職員制度とは、全く知らない制度だった。最近できたという。この制度にはトリックがあり、分からない人が多いことをいいことに、どうも国が憲法違反もしているようだ。実際のこの制度のもとで働いている方と労働問題のベテランとがスタジオに集まって、現状をさらけ出してくださった。聞いているうちに、日本の役人はなんと「小ちゃい」と思った。(報告 笠原眞弓)

 

◆会計年度任用職員制度ってなに?

 

まず「任用」ってなに? から始まった疑問の連続だった。任用とは、民間でいう「雇用」に近いらしい。会計年度とは、4月1日から次の年の3月31日までをいう。その間のみの任用であって雇用していないので、なんの保証もなくサヨナラできる制度だ。3年間働くと、全ての経験はチャラになってサヨナラされる。続けて働きたかったらまた採用試験を受けることになる。私の頭は混乱する。「任用」は一年単位の契約なので、解雇にもならない。

一般企業の非正規問題が整備される中で、官製の任用が法律的に問題になってきて、「改善しました」と出てきたのが既成事実を、法的に合法化したこの制度だったと、労働問題に20年以上関わっているジャーナリストの竹信三恵子さんはいう。「初めはハローワークの窓口だけだったこの働き方が、広く適用されては問題だ」と竹信さんが取り上げると、「改悪される形で法的裏付けをつけたものになった」という。そこで官製ワーキングプア研究会を白石孝さんと立ち上げた。

この制度は「財政削減」が目的と見抜き、それに対抗してきたという。特にこの任用職員の仕事は、保育士や窓口業務など、直接市民と接触する部門、つまり経験値がものをいう部門にあたる。その人たちをあえて3年で首を切っていく仕組みなのだ。もともと本採用の職員は、3年くらいで配置換えがあり、経験値を積み上げるのが難しい。そこに3年ごとに同じ職に任用されれば経験値は上がっていくのは当然だ。継続している仕事ならば、常勤にするべきなのにそれをしない。

 

◆「仕事が短時間で済むからパート」か「退職金を払わなくていいからパート」か? 国の真意は?

 

会計年度任用職員は女性が多く、フルタイムではない。5分あるいは15分の時短なのだ。それによって退職金を払わなくてよくなったと言うが、なんと姑息なことかと思う。しかも、会計年度任用職員は、女性が8割以上を占め「夫に養って貰えばいいでしょう」と採用の時言われることもあるとか。この女性差別は、なんなのか? ヨーロッパでは同じ仕事を働く時間で賃金に差をつけることは許されない。国際的にも認めからていないとか。

 

◆任用職員の不安定な働かせ方

 

この制度にはいくつかのトリックがあり、1年、2年働いた再任用の人が別のポストに行きたいというと、空きが他になければ、3年働いた人は試験をうけても受からない。この1〜3年ごとの再任用は、パワハラの温床にもなる可能性があり、働く人に改善点の進言や提案などを言わせない雰囲気を作るばかりか、それらの人事が決まる時期は、仲間同士が疑心暗鬼になって、職場の雰囲気が悪くなるという。これは、双方にとってマイナスではないか? この制度は常に雇う側の「支配」に主眼があるといえる。

 ご自身が「国の期間業務職員」でもあり、現場の声を集めてこられた山岸薫さんは、団結しにくい環境の中で、仲間たちとオープンチャットを開いている(集まれ!非正規公務員カフェ FBとTwitter)。その中からご本人と彼女たちの生の声をいくつか聞いた。

・労組に入れなかった

・同じ会計年度任用職員でも、職種が違うと連帯しにくい

・非正規と正規という身分制を作って職場を分断している

・仕事の重要性は、身分に関係なく責任を持ってあたっている

・ハラスメントがとても多い

などと言うことだ。

 

白石さんも沢山の言いたいことのある中で、ハラスメントでは特に思うところがあり、病気になった場合の対応が、無期任用だと有給休暇期間が終われば次の任用はないといい、竹信さんも妊娠したらマタハラがあり、長期の病気になったらと質問すると「来年はいないから」とゾッとすることを平気で答えたとか。聞けば聞くほど悲しくなる現状。でも、竹信さんは保育所職員の労働訴訟では、実態を知っている母親たちが団結して市に働きかけ、裁判に勝利している。窓口業務などでも市民を味方につけた闘いが勝利への道だと力強く語る。

 

司会の柴田さんは憲法28条を読み上げ、誰もが労働三権に守られているという。そして「雇用の安定がなければ生活の安定がない。それがなければ、社会の安定がない。社会が安定していなければ社会の活力が削がれていく。今日本の活力が奪われているのは、そこに原因があるのではないかと」という。

 

*休憩タイム「ジョニーと乱の5ミニッツ」

〔川柳〕

・非正規は生かさず殺さず雇い止め  乱鬼龍

・首つなぐイスの上にもあと三年    奥徒

〔歌〕

ジョニーH 会計年度任用職員制度っ何?(渡り鳥はぐれ鳥)

 

*以下は寄せられた声

「公務員の労働形態がこんな事になってるとは知りませんでした。私だけでなく世間に広く知られてないのではないでしょうか。非正規雇用や賃上げが日本の停滞の根本問題の一つだと認識されはじめているのに、公務員がこの状態ではどうしようもないでしょう」(H)

◆次回:4月12日(水)は特番90分放送。小出裕章さんスタジオ生出演。「小出裕章さんに聞く〜『原発回帰』ホントにいいの?」をお送りします。


●180号(2023/3/9)放送 : 労働組合をジェンダー平等にするために〜社会的規範をぶち壊せ!

 3月9日のレイバーネットTV第180号は「労働組合をジェンダー平等にするために〜社会的規範をぶち壊せ!」を放送した。前日の3月8日は「国際女性デー」。スタジオ背景は女性デーのシンボルである「ミモザカラー(黄色)」で飾られた。レイバーネットTVでは労働組合のプラス面を強調する番組が多いが、今回はあえて労働組合の問題点をジェンダーの視点から斬り込むものになった。

 ゲストの一人、中島由美子さんは組合歴40年、専従歴30年のベテランで組合を知り尽くしている人。現在は、全国一般東京南部の委員長だ。しかし女性ゆえに「男性中心」の運営のなかで様々な困難をあじわってきた。中島由美子さんの生々しい話にギャラリーは釘付けになった。「会議などで女性が発言したあと男性が補足するといって、同じことを繰り返し、余計な話をする人がいます。私はホソキストと呼んでいます。女性は0.7人前扱いなのです」。

 毎日新聞記者で前新聞労連委員長の吉永磨美さんは、「女性記者に対するセクハラ事件が起きたときに、労働組合として取り上げられなかったことが悔しかった。それがジェンダー問題を追うきっかけだった」という。「いま非正規労働者は3人の1人。その8割が女性である。でもその女性の姿が労働組合では見えない。そこに目を向けない限り、労働組合の未来はない!」と強調した。

 5分の休憩タイムでは、門岡瞳さん)が2つの女性に関する詩を朗読した。1920年代のフラッパーのエドナ・ヴィンセント・ミレイの『最初の無花果』とジェームス・オッペンハイムの『パンと薔薇』だった。

 またこの日のためにレイバーネット川柳班が「ジェンダー投句」を募集した。出演者らが気に入った句を選んだ。吉永磨美さんは「お前がさ男だったらよかったよ」を取り上げ、「親から私がいつも言われていたこと」とコメントした。中島由美子さんが選んだのは「性差別動かぬ証拠議員席」だった。「この句が気に入った。なぜなら差別の実態が議員席に可視化されているから」と中島さん。

 今回の放送は、ジェンダーの視点から、人権意識や社会運動のあり方を問う番組になった。アーカイブをぜひ活用してほしい。なお、次回放送は、3月22日(水)で「低賃金と不安定雇用の現実〜『会計年度任用職員』の闇」(仮)をお送りする予定。(M)

↓放送直後に寄せられた感想
 「やっと、かなりまともにレイバーネットTVを見ました。一人で声を出して笑ったわ、ホソキストとか!? う?ム、なんだか少し力をもらったかな。感じる、分析する、言葉を知る、問題がクリア に見える…」(K)


●179号(2023/2/20)報告 : 「放射能汚染土」の危険な全貌が明らかに

 2月20日のレイバーネットTV179号は、「新宿御苑・放射能汚染土持ち込み問題」を取り上げた。フクシマの原発事故で現在、東京ドーム11杯分の「放射能汚染土」がたまっており、政府はそれを全国にばらまこうとしている。その先駆けのテストケースとして、「新宿御苑」「所沢」などが選ばれた。番組では、平井玄さん(新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会世話人)、まさのあつこさん(ジャーナリスト、『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』著者)の明快な解説で、汚染土の危険な全貌が明らかにされた。

 従来の安全基準はセシウムが100ベクレルとされていたが、今回の汚染土はその80倍の8000ベクレルであること。さらに危険な核物質であるストロンチウムが入っている可能性があるが、そのことにはまったく触れられていないこと。今回の実証実験の政府の狙いは、「核廃棄物に慣れさせ、原発再稼働の推進にある」ことは明らかだった。

 放送後、さっそく福島県西郷村で事故にあった黒鉄好さんからコメントが送られてきた。以下、紹介する。(M)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「こんな思いをするのは私たちだけでたくさん」が福島の声

 黒鉄好(事故当時、福島県西郷村→北海道)です。じっくり見させていただきました。メディアが取り上げない問題に切り込むいい番組でした。

 今日の番組で、新宿区も所沢市も「汚染土を福島の人たちだけに背負わせるわけは行かない。私たちも貢献しなければ」と発言していると聞いて、唖然としました。事故を挟んで、2007年4月から2013年3月まで6年間(事故後は2年間)、福島に住んでいましたが、そんなことを頼んだ覚えはないですし、そんなところで勝手に引き合いに出されること自体、すべての福島県民に対する冒涜であり侮辱です。

 私が知っている福島県民(運動関係者でない人含む)の中に、そんなことを考えている人は1人としていません。むしろ「こんな思いをするのは私たちだけでたくさん。他県の人には経験してもらいたくない」と言う人ばかりでした。

 「福島第1の電気を使っていたのは首都圏の人たちなのだから、首都圏も負担を分かち合え」などという人を時折、見かけます。しかし福島県民の総意は違います。「今となっては福島第1の電気を誰が使っていたのかは関係ない。金のために原発を誘致しようという流れができたときに、きちんと反対せず、止められなかった私たち福島県民が悪い。原発を作らせなければこんなことにならなかった」「私たちが犠牲になることで、次を生まなくてすむのであれば、私たちが最後の被ばく者でいい」……運動関係者でない人を含め、こんな声しか私は2年間、聞きませんでした。

<詳細報告>(笠原眞弓)は、レイバーネットのサイトからご覧ください。こちら

<関連記事>「汚染土の持ち出しなど許さない」〜所沢市で双葉町民が訴える こちら


官僚は哀れなほどにリピートマシン「新宿御苑・放射能汚染土問題」環境省に申し入れ

 

 2月24日、参議院議員会館で朝から環境省申し入れ。報道陣含めて60人以上が集まりました。官僚は哀れなほどリピートマシン。数値は文科省そのままセシウムだけ、特措法の法的矛盾にも答えず。一方で所沢の人たちは説明会も拒否。震災時に6年間、福島に住んだ人は「ばら撒けなんて誰も言ってない」と証言。渋谷から来た方は「3分の1は渋谷区なのに通知さえない」ーーという怒りをぶつけた大衆団交でした。

①特措法の法的不整合をどう解釈する?

②セシウム以外のデータ公開せよ。

③所沢の拒否に回答せよ。

④新宿渋谷への公開説明会の日時を早急に示せ。

ーー以上について文書で答えよ、と国会議員を通じて要求します。

◼️環境省申し入れの報告集会 3/4土曜日18時から四谷地域センター12階多目的ホールでやります。平井玄)